▽経済問題にも引き続き注目
金融危機の嵐が世界中に吹き荒れる中、欧州諸国や米国は相次いで深刻な経済危機に陥った。日本も低迷から逃れることはできないが、日本の金融機関は金融危機の発端となった米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンに関連した金融派生商品(デリバティブ)にそれほど手を出していないため、金融危機の影響は比較的小さいといえる。
また金融危機により国際的流動資金のリスクヘッジ・ニーズが瞬く間に高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)は「ゼロ金利」政策を実施したため、米ドルが大きな圧力を受けることになった。米国債の収益率と大いに連動する日本円は、リスクヘッジ資金の動向がプラスとなり、異常なほど値上がりした。このため日本の輸出業者は数十年ぶりに厳しい国際市場環境に直面することになった。日本経済の成長は米国などの海外市場に極度に依存しており、米ドルの下落と円の上昇が成長を妨げているのは間違いない。加えて原材料価格の高騰、消費マインドの低下、株式市場の低迷など、さまざまな要因が日本経済の足かせとなり、日本国民に心理的ダメージを与えている。
国民の支持を失った政府は続投が難しくなるのが一般的だ。阿部首相と福田首相の辞職直前の支持率は20%前後に低迷していた。いまだに効果が現れない経済振興策が、両首脳が国民の支持を失った主な原因だった。かつて、早ければ08年10月に衆議院を解散して総選挙を行い、国民の新任を受けて政権を立て直すことを計画していた麻生首相だが、政策によって経済の低迷から抜け出せない状況の中、支持率は前任者と前々任者の辞職当時の水準にまで落ち込んでいる。
麻生首相自身、圧力を感じており、新年年頭の談話の中で、金融問題と国際金融問題が今年の最重要課題であるとの見方を示したが、衆議院での追求と世論に現れた不人気さを払拭するには至っていない。本来は衆議院を解散し、国民の投票で改めて任命されるべきだった麻生首相は、金融危機のおかげで、経済低迷への対応を理由に総選挙の時期を引き伸ばし、しばらく政権を維持することが可能になった。
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