チャンスとチャレンジの共存
今回の中日韓三カ国首脳会議が注目された背景としての重要な要素は日本政局の変化だ。民主党が政権を取った後、最も注目される変化は、鳩山首相が提起した「アジア重視」を目指すいわゆる「脱米入亜」(米国から脱してアジアに入る)戦略である。鳩山首相の「アジア重視」は自民党の時期にも提起したことがある「アジア重視」とは基本点において異なっている。自民党は「日米同盟を基軸とする」との外交安全保障戦略の中で「アジア重視」を議論しているが、鳩山首相は「アジアの一員」との考えで「重視」戦略を考えている。自民党はアジア諸国に対し区分政策をとり、いわゆる「価値観外交」を強調したが、鳩山首相は価値観が異なる諸国と友好関係を発展させるという「友愛」外交を打ち出した。中韓両国が関心を寄せる歴史問題において、鳩山首相は隣国の気持ちを尊重し、内閣は決して靖国神社を参拝しないと明確に示した。外交戦略における日本政府の調整は、三カ国協力及び東アジア協力のさらなる進展に契機をもたらしたに違いない。
中日韓三カ国協力には客観的な原動力も存在しているが、障害も存在している。三国間の文化と経済発展の水準の差異、歴史的恩讐、領土の紛争、価値観の不一致及び今後の戦略の不確定性は双方の相互信頼と協力のさらなる進展を妨げている。東アジア共同体構築をねらう三カ国協力も多くの挑戦と試練に直面している。第一に、各国の間ではどのように共同体を構築するかについて異なった認識と理解がある。日本内部でさえ、鳩山首相のアジア共同体外交を嘆く声が多い。このような相違は認識上の違いに現れているほか、主にアジア地域内部の相違性の大きさを示している。このため、今後どのようにこのような違いを乗り越え、地域内で安定した共同体意識の形成に取り組み、逐次協力を深めていくのかが重要な課題となっている。第二に、東アジア地域の協力は常に米国からの外的挑戦に直面している。東アジア地域と米国は複雑な関係を持っており、米国も一貫して東アジア地域を自らの勢力範囲と見なし、東アジア共同体から米国を排除することに反対している。鳩山首相が提起した「対米独立」、「アジア融合」政策は米国の反対を受け、日本国内の親米勢力が依然として弱くないこともあり、「脱米入亜」を「親米入亜」に変えることを提起した人もいる。鳩山政権が「入亜」の問題で米国との関係をうまく処理できなければ、日本のアジア政策は揺れ動く可能性があるだろう。このため、日本国内に安定した「入亜」に対する共通認識が醸成できるかどうかは、日本の外交だけでなく、東アジア協力の進行過程にも影響を及ぼしていくに違いない。第三に、地域の安全問題だ。東アジア協力の最大の障害は地域の安全問題を解決する鍵が東アジア諸国の手中に握られていないことにある。北朝鮮の核問題は現在、東アジア地域の安全情勢に影響を及ぼす最大の要素となっている。今回の三カ国首脳会議で北朝鮮の核問題を重点的に議論し、三カ国がこの問題での協力強化を表明し、韓国もいわゆる「グランド・バーゲン」案を提起し、この問題で主導的役割を発揮することを望んでいる。しかし、この問題を解決する鍵は米朝双方にある。現在の複雑な情勢によって、北朝鮮の核問題は長期化される可能性があるかもしれない。北朝鮮の核問題が解決されなければ、必然的に三国間の「安定した戦略的な相互信頼関係の構築」に影響を及ぼし、従って地域協力の発展に影響を及ぼすことになるだろう。第四に、三国間に存在する領土、領海の問題をうまく処理できないならば、同様に三カ国の安全上の戦略的な相互信頼関係に影響を及ぼし、しかも常に三国間の矛盾を激化させる焦点になる可能性がある。そのため、どのように利益衝突や社会的敵意に対処するかは、各国の首脳にとって重要な試練となっている。全般的に見て、三カ国協力が困難の中で途切れなく前に進んでいくことができるのは、このような協力が各国全体の利益に合致することを証明している。こうした協力がより順調に前に進むようにするには三カ国政府のたゆまぬ努力と推進に頼るだけでなく、三カ国の社会の共同体意識が深まり、進展していくことが必要である。
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