財団法人機械産業記念事業財団の福川伸次会長は、中国社会科学院日本研究所と全国日本経済学会が共催した国際シンポジウム「中日経済協力の回顧と新たな地平」で基調講演を行い、「第二と第三の経済力を持つ日本と中国が、その協力関係を新次元に飛躍させ、連携して世界の明るい未来を創ることを期待している」と述べ、次の6つの面での協力強化が必要だと述べた。
(1)新しい秩序形成を目指す国際公共財の提供
日中両国は新しい秩序形成に向けて国際公共財の提供に協力し、自由貿易の推進者として新ラウンドの早期妥結に向けて関係国に働きかけるとともに、地球温暖化対策について国際協調体制の確立を主導する必要がある。そして両国は新しい成長モデルの探求や金融システムの安定、国際通貨体制の改革などについて研究を深め、積極的に提案をするべきだ。
(2) 人間価値を基軸として戦略的成長モデルを追求
金融主導経済が崩壊した今、人々や社会が真に希求する価値を創造し、充足する実需に支えられた成長モデルを探求することが大切だ。
これまでモノづくりを産業政策の中心に据えて経済を発展させてきた両国は、人々の価値観が文化や生活に向っていることを考え、これまでの経済成果と技術の蓄積を人間の進化に向け、自国の伝統的な文化と現代的なものと結び付けて、新しい市場を開かなければならない。
そして日本はもとより中国もやがて高齢少子化の時期を迎えるという状況の中で、両国は医療や介護など社会福祉システムや雇用関係の改革を学びあい、両国国民が高い関心を持つ食の安全や安心した生活、災害防止、感染症予防などについて協力していく必要がある。
(3)市場経済システムの高度化
日中両国は世界モデルとなる質の高い活力のある市場経済の確立に挑戦しなければならない。両国がこれまでの経験を持ち寄れば、よりよい市場経済に関する制度設計ができる。