前新華社東京支局局長 冮冶
日本の社会では高く評価を受けている「模範労働者」は珍しい。個人の輝かしい成果は企業の成績に埋没してしまい、よく耳にする松下やトヨタ、ソニー、ニコンなどの企業でも「模範労働者」の名前を聞いたことがない。時折、日本の新聞では様々な職業の人たちが紹介され、その内容はとても面白かったが、そうした人たちからは「労働模範者」の精神が垣間見られ、日本社会に生きる人たちの様子をうかがい知ることができる。
窓ガラスふきの世界一
窓をふく若者。東京のホテルニューオータニで(撮影:冮冶)
本当にどの職業にも優れた人がいる。39歳の細川泰生さんは窓ガラスふきの世界一だ。
名古屋では2006年9月、60人ほどが参加した日本ガラスクリーニング選手権大会が開催された。この大会で細川さんは、縦横1メートルほどの3枚のガラスを19.547秒のタイムでふいて優勝。2008年2月には、友人や会社の勧めで出場した米国カリフォルニア・サンディアゴの窓ガラスふき国際大会で、18人の名人を下して頂点に立った。
日本ガラスクリーニング選手権大会の開催は2年に1度。細川さんは窓ガラスふきの技術を一途に磨き、手早く窓を拭く5つのコツをまとめて人に伝授している。この仕事をしていて細川さんは、窓ガラスを一心不乱にふいていると心がきれいになったように感じるという。
新幹線を清掃する「達人」
中国語が起源の「達人」という言葉は、一般的にある分野での専門家や名人を指す。
59歳の田名網留里子さんは、新幹線の車両を清掃する「達人」だ。新幹線が東京駅のホームに停車している時間はわずか12分。乗客が乗り降りするためには5分が必要なことから、清掃時間はたった7分しかない。その7分以内に車両の床、窓、テーブルを拭き、背網のごみを回収して次の乗客を迎える。
手足の動きがすばやい田名網さんは、1列5席のテーブルと窓枠を、普通11秒かかるところを8秒でふく。1車両分にすると1分の差だ。新幹線の発車頻度はかなり高いが、秒単位で清掃をしていることを知っておもわず納得した。