日本の農林中金総合研究所で所長をしていた上山さんは、非常に真面目な人で、80歳を越える高齢にもかかわらず、中日間の民間交流に自らの力の及ぶ限り取り組んできた。
あるとき上山さんは、2袋の落花生を持って来たことがある。ビニールで密封包装された同じような落花生を指差し、粒の大きさや加工、食べた時の歯ざわりはほぼ同じだが、その優劣を見分けることが出来るかとたずねた。この2つの落花生は4倍近くの値段の差があると言う。
私と同僚は結局、それぞれの味の違いを見分けることは出来なかった。レシートには1030円と240円とある。もう一度よく見ると、重さは共に500グラム、パッケージの品質にも違いはなかったが、1つには中国産、もう1つには千葉県産と印刷されていた。
農産品の生産コストは国によってそれぞれ異なる。しかし上山さんは、日本で売られている中日の農産品が、品質は同じながらかなり違う値段だということに対して「こんなに安い価格だと、同じように働いている中国の農民たちの本当の労働の価値を具体的に表すことはできるのだろうか」と容認できない表情で、1年中働き続けている中国の農民がなぜ、国際市場でこのような不公平な待遇を受けなければならないのだろうかと憤っている様子だった。
東京大学農学部を卒業した上山さんは、マルクス主義政治経済学にも造詣が深い。ずっと農林業に携わってきたことから、日本の農業の専門家でもある。そんな上山さんによると、農産物は産地から消費者の手に届くまで多くの順序を経なければならず、一般的に日本では最終的に生産者の取り分は、小売価格の半分から6割前後だという。では、はるばる遠くから商社を通して日本で売られる低価格の中国産落花生は、最終的に中国の農民の手にどのくらい入るのだろうか。
上山さんは落花生以外にも、2種類のにんにくを持ってきたことがある。1つは1個150円の日本産、もう1つは3個80円の中国産。形は少し違っていたが、3個80円の中国産は、日本産1個の約半分の値段に過ぎない。
「日本の農業はかなり政府の政策やサポートに頼り、農業協同組合は農民の利益を農民を保護する組織で、そのため農産物の価格は一定の範囲内に保たれている。中国と日本では労働力の価格や価格体系、貿易体系など様々な違いがあるが、同じ品質の同じ農産物なら、中国産でも日本では日本産の7割から8割の値段で販売されてもいいだろう」
上山さんは、値段が低ければ低いほどよく売れるというものではなく、逆に価格が安いと品質が悪いのではないかという錯覚を抱かせるという。また中国から輸入される大きな袋入りの農産品は、品質や大きさがまちまちで、それが価格を抑えている原因だと指摘する。
随分年月が経った。かつて上山さんは、暑い中で汗を流しながら懸命に働いている中国の農民の話をし、中国の農民の取り分が極めて少ないことに話が及ぶと、とても腹立たしい表情を浮かべていたが、私は今でもその表情を忘れることができない。
日本には上山さんのような、中国に対して友好的な人は多い。これはもしかしたら日本と中国の文化の源は同じことによるもので、特に年齢の高い人たちの中には中国に対してごく自然な親近感を持っているような気がする。中日の友好が今日のように非常によい状態なのは、そうした人たちのおかげだろう。そしてそうした人たちは、最初から最後まで中日友好発展のしっかりとした基礎である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月4日