英国紙「フィナンシャル・タイムズ」が11日に伝えたところによると、日本の衛生設備メーカー大手のイナックスが通常提供する商品は、黒でなければ白といったシンプルなスタイルのものだが、中国ではもっと多様なスタイルが必要とされるという。「環球時報」が伝えた。
イナックスは上海万博(2010年中国(上海)万国博覧会)の日本産業館に世界トップレベルの陶器製便器(世界一トイレ)を設置するにあたって、表面を金色に塗り上げた。ここから自社の製品を調整して、戦略的に重大な意義をもつ中国市場の意向をくみ取ろうとするイナックスの姿勢をうかがうことができる。
イナックスの万博プロジェクトマネージャーは「日本人はシンプルで機能的なデザインを好むが、中国の消費者はよりデザイン的で装飾的な製品を好む傾向がある」と話す。
ますます多くの日本企業が中国人の嗜好を考慮するようになっている。たとえば、イナックスは中国でバス用品やタイル、便器などを生産するようになって10年以上経つが、最近になって初めて中国をハイテクトイレ(自動化便座、シャワーブース、消臭装置、音声制御システムを備えたトイレ)の真の市場とみなすようになった。
同マネージャーは次のように話す。中国での生産開始当初は中国で日本向けの製品を生産しているだけだったが、今では中国市場をますます重視するようになっている。市場を米ドル建てで計算すると、中国は今年、国内総生産(GDP)で日本を追い抜く見込みだ。中国という新興の世界的に重要な市場に直面して、世界の大手企業は自社製品を中国の消費者の嗜好に合わせることをますます必要とするようになっている。たとえば日本の自動車メーカートップになったばかりの日産自動車は、北京市にデザイン室を設立し、中国人にとってより魅力のある自動車の設計を支援したいとの姿勢を示す。
日本の医療機器メーカー・テルモも上海万博の日本産業館にかかわっている。同社のマネージャーは「年間の販売量増加率が30%に達する中国は、テルモにとって最も重要な市場となったが、中国の状況を理解するための方法を考えなくてはならない。われわれには経験がまったくない。これはわれわれが直面する最も大きな課題だと考えている。もしも単純に米国市場向けに研究開発された製品を中国にもってくるとしたら、たちまち価格競争に直面することになる」と話す。
だが中国の嗜好に合わせて自社製品を調整すると同時に、多くの企業は彼らにとって最大の市場である中国市場の優位点は技術と品質にあるということも認識している。イナックスは営業活動の中で、企業の根っこが日本にあることを一貫して強調し、上海万博での展示内容は「日本のトイレ文化の展示」と呼ばれている。イナックスはさらに日本のシンガーソングライター植村花菜を万博会場に招き、来場者の前でオリジナル曲「トイレの神様」を披露する計画も立てている。
テルモは中国でデジタル体温計を生産しているが、中国の消費者に販売するときには、製品の「日本品質」を常に強調している。パッケージには日本語の説明書も封入し、中国語と英語で日本品質の保証もうたっている。
テルモの万博マネージャーは「これは過剰かもしれないが、品質という文化を守ろうとするわれわれの姿勢を伝えるものだ」と話す。
しかし、このほど中国に進出した企業で自社製品を中国化させることを拒否し、それほど労せずして中国で根を張ることに成功した企業もある。
今年5月、「ユニクロ」などのブランドを擁する日本の衣料品メーカー・ファーストリテイリングは、上海で最も高級とされるショッピング街にユニクロの大型旗艦店をオープンした。同社のスポークスマンによると、ユニクロはすべての店舗で同一の製品を、ほぼ同価格で、同水準の顧客サービスの下で提供することをモットーとする。同スポークスマンは「われわれはいかなる国の支店であれ、違うことをするのを許さない。世界は今グローバル化しており、日本の顧客が喜ぶ商品は、ニューヨークの顧客やロンドンの顧客や上海の顧客が喜ぶ商品とますます似通ってきていると確信する」と話す。
「人民網日本語版」2010年7月13日