当時25歳だった加藤智大容疑者は、2008年6月8日昼頃、東京の秋葉原で歩行者を車ではねたあと、さらに刃物で次々と歩行者や警察を刺し、7人が死亡し10人が負傷した。8月4日にはこの事件の第20回公判が行われた。
いったい何が普通の若い男性を殺人鬼に変えてしまっのだろうか。
2008年6月6日には凶器を買う様子が監視カメラに写っていた
容疑者の供述調書
最高裁判所の島田仁郎裁判官は日本の刑事裁判の核心理念に言及した際、最大限に事件の「事実の全貌」を示すべきだと記している。
島田裁判官の言う「事実」とは、犯罪動機や準備、実施、警察の検挙、証拠収集、容疑者の供述などの過程だけでなく、容疑者と関係のある社会的背景や経歴をできるだけ深く掘り下げ、はっきりさせるという意味だ。
検察側の加藤容疑者の背景に関する調査は極めて細かい。例えば第20回公判での供述調書では、加藤容疑者に前科はないが、一度車を運転して曲がる時に停車せず交通法違反の切符を切られていたと読み上げられた。
中学校の時の成績はクラスでは2番目で、高校での最初の試験の結果がよくなったため母親が非常に怒り、その後は反抗的な感情に支配され、わざと勉強しなかったという。これは加藤容疑者の家庭環境と親子関係だ。
2003年に短大を卒業して仙台市でガードマンになったが、残業手当がないことから辞め、2005年4月から2006年4月にかけては埼玉県のある自動車工場で働いていたがその後辞職。2006年5月から8月までは茨城県のある建築材料工場で働き、フォークリフトの免許を取らせてくれないとの理由で退職。2007年1月から9月までは青森市でトラック運転手をしていたが長くは続かなかった。2007年11月から2008年6月までは静岡県のある自動車工場で働き、同僚といざこざを起こして辞めた。これは就業状況だ。
独身で結婚したことがなく、付き合っている女性もいない。両親とは1年間、連絡を取っていなかった。高校を卒業してからは兄弟とも会ったことがない。これは個人的なことだ。