三、政策策定の相違
周知のように、社会主義の中国は新しい国家形態であり、参考にすることができる他国の経験はほとんどない。このため、模索しながら進まなければならないことも多く、換言すれば、どうしても先に行動し、後に規範化せざえるを得ない。実践においては、問題を発見し、実践経験と教訓を汲み取った後、実情に基づき、政策を策定する。行動の過程では絶えず矛盾を解決し、良い方策を探し当て、これを規範化する。このように的を絞って的確に政策を策定する方法は、持続的発展にプラスとなる。
日本は災害が頻発する国である。太平洋の地震多発地帯に位置するので、有感地震が1日に平均4回もあり、日本列島は障壁となる高い山がないため、台風の被害に見舞われやすい。日本では木造建築物が比較的多くて火災が起こりやすい。しかし、日本人は「遠慮なければ必ず近憂あり」という古代の偉大な思想家である孔子の教戒をしっかりと心に刻んでおり、危機意識が強く、転ばぬ先の杖を用意しておくことに慣れている。従って、災いを未然に防ぐため、日本人は一般的に先に政策を策定する。例を挙げて言うと、日本の新幹線が45年間にわたって致命的な事故を起こさず安全かつ時間どおりに運行できたことは、事前の比較的綿密で完備した規則制度のおかげであるに違いない。
政策の策定は行動を規範化するためのものである。中国は政策策定より行動を先にし、日本は行動より政策策定を先にしているが、どちらの方法にもメリットとデメリットがある。前者の場合は、法規を定めていないためプロジェクトを実施する過程ですきに乗じられやすい。後者の場合は、まだ経験、教訓がないため、綿密で全面的な政策を策定することは難しい。中日間が理解を深め、長所を取り入れ、短所を補っていけば、自然と事業の成功率を高めることができるだろう。
結び
中日間の文化の違いはこれに止まらず、枚挙にいとまがないと言っていい。例えば、人の気質について言うと、中国人は話しぶりや立ち居振舞いの面で役人気質があるが、日本人には職人気質がある。というのは、中国では従来官吏になることが光栄とされ、士農工商(官吏・百姓・職人・商人)の中で士を上位にしているためである。その上中国ではこれまでずっと政治運動が多かったため、政治に関心を寄せる習慣が身についている。例えば、政治とは大きな関係がないように見えるタクシー運転手でもよく政治について語るのを好むが、これは外国人観光客にとっては物珍しく、不思議に思われる。
日本人は実際を非常に重んじ、先に小さな事や目の前の事をしっかりとやっておくことを主張している。彼らはきわめてまじめな態度で事をしっかり運ぶ。そこには、職人気質が表れていると言っていいだろう。
上記のような中日文化間の三つの相違だけでも、隣り合う二国間に強い相互補完性があることを説明するのに十分だ。残念なのは、両国が離れることのできない近隣国であるにもかかわらず、相互に深く理解し合うことができず、互いに助け合ってウィンウィンの関係を築くこともまだほとんど具体的になっていないことだ。このため、私は両国民がまず文化の交流から着手することを希望する。なぜなら文化は領域が広くて、生活と密接に係っており、意思疎通しやすいからだ。文化交流を通じて、相手を理解し、他人の長所を学び、自分の短所を補い、自己を豊かにし、事業を成し遂げることは、双方にメリットがあるはずだ。(賈蕙萱・北京大学国際関係学院教授)
「北京週報日本語版」2010年7月26日