人民元の大幅な切り上げは問題の解決に役立たない。
人民元紙幣を揃える四川省遂寧市郵政貯蓄銀行の行員(鐘敏撮影)
為替戦争は世界経済にマイナス
近頃、通貨と為替レート政策をめぐる各国の対立と不一致がいくらか増えているが、この局面はまだ「戦争」と言うほどではない。上海社会科学院世界経済研究所国際金融通貨研究センターの周宇主任は、各国は為替戦争の発生を避けるように努めるべきで、それはいったん「為替戦争」が発生したら世界経済に壊滅的な悪影響をもたらすからだとの考えを示し、次のように語っている。
為替戦争がいったん発生したら、まずは世界的なインフレリスクを助長する。米国以外の国は米国のやり方を見習って量的緩和政策をとることになり、このような「群集効果」によって、流動性が氾濫し、世界的なインフレリスクを招くことになるだろう。
さらに、為替戦争は国際通貨システムの安定を破壊する。ドルの為替レートの激動は必然的に国際通貨システムと国際金融市場に大きな打撃を与える。現在、全世界の準備通貨に占めるドルの比重は60%を上回り、国際貿易決算通貨に占める比重は50%を上回っている。いったん米ドルが大幅に下落したら、米ドルで投資や決算を行う経済実体は調整の圧力に直面することに追い込まれ、余分の調整コストを引き受けざるを得ない。
また、為替戦争は「貿易戦争」リスクを招くことになる。新興市場国はどこも外国為替市場に介入しているため、先進国が本位貨幣の通貨安を通じて純輸出促進の目標を達成するのは難しい。このような情況の下で、先進国の政府は自然と保護貿易主義に走るようになる。即ち、貿易制裁を実施すると脅して、新興市場国が通貨を切り上げるよう迫る。もし新興市場国が譲歩を拒めば、最終的に双方が「目には目を、歯に歯を」的な輸入制裁措置を実施する結果となり、世界的な為替戦争から世界貿易戦争に至るだろう。貿易戦争の結果は言うまでもなく、双方とも痛手を受け、世界経済の回復に影響が及ぶ。
為替戦争は新興市場国が直面するリスクを高めている。新興市場国の収益率が先進国のそれを上回るため、米国の量的緩和政策によって大量のホットマネーが新興市場国に流れ込むことになり、もしこれらの国が本位貨幣の対米ドル大幅高を許すならば、新興市場国の対外経済状態が悪化することになるだろう。これに反して、もし新興市場国が外国為替市場への介入を通じて本位貨幣の通貨高を食い止めるなら、この対策はインフレリスクと資産バブルリスクを招くことになるだろう。今後、米国政府が利率を引き上げれば、大規模な資本流出によって新興市場国の金融危機を誘発する可能性がある。