「北京大学は安全だ」と山田君
高木君の隣に座っている山田君は、早稲田大学法学部の3年生だ。彼はコーヒーを少しだけ飲んでから、「中国人の友人と口論しそうになった」という体験を語り始めた。
早稲田大学でも北京大学でも、中国人学生との付き合いで避けて通れないのが、“歴史”の話題だ。
以前、山田君は中国の大陸と台湾省について話そうとして、「中国と台湾」と言った。すると、中国人の友人は即座に、確信を持った強い口調で、「その表現は間違っている。台湾は中国の一部分だ」と訂正した。
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友人同士のお喋りで、そこまで突き詰める必要があるのか。山田君は納得がいかなかったが、相手と口論になるのも嫌だったので、その話題はうやむやのままに終わった。これは、多くの日本人の若者に共通するもので、難しいと思う話題はすぐに変え、自分や相手が気まずい思いをするのを避ける。
話せない話題には、他に領土問題や歴史問題がある。中国に来て僅か2カ月で、彼らは中日関係の最前線を体験する日本人となった。
教室で山田君と一緒に座っている中国人学生が、「君は釣魚島問題についてどう思う?」と聞いてきた。山田君は本当にこの問題について多くを知らなかった。「僕には今、その質問に答えられだけの知識がないから」、山田君にはそれしか言えなかった。
何日かして、彼は日本の両親からの電話の中で、父や母が心配している様子を感じた。「中国で起きている反日デモに巻き込まれるのではないかと、両親は心配しています。でも、北京大学はとても安全だと伝えました。僕達に過激な言動をとる人は殆どいません」。
“No.1”が大事、“Only one”はもっと大事