中国では国家が企業のレベルアップを求めている事が中小企業の負担になっている。レベルアップと言うのは簡単だし、政策もすぐに打ち出せるが、問題はどうやれば良いのかである。企業をレベルアップして、最先端技術を手に入れたいと考えるのならば、長年積み上げてきた豊富な研究や経験などのしっかりとした土台が必要不可欠なのである。中国企業がレベルアップする過程を見ると面白い傾向が見えてくる。トップに君臨し、業界を牛耳っている企業であればあるほど、研究開発に積極的ではないという事だ。海外向けの企業はもう少し積極的かと思えば、そんなこともなく、2000年以降になると、研究開発は大分二の次にされてきている。
しかし、企業のレベルアップには研究開発が重要であることを忘れてはいけない。研究開発に重点をおかなければ、中国企業のイノベーションは机上の空論となるだろう。なぜ、企業は研究開発に興味がなく力を入れないのだろうか。これは、政府が制度やルールをきちんと整えていない事に関係があるのではないだろうか。日本の中小企業がどうやって上手くやっているのかを分析してみると、政府の力が大きく関係している事が分かる。
日本は先進国の中でも、最初に中小企業庁を設けた国である。1948年にこの専門的なサポート機関を設立し、1963年には特定の法律も制定している。日本の中小企業は下請制を中心としている。つまり、多くの企業が連携し部品製造やサービスを行なう分業構造になっている。これらの中小企業の技術は素晴らしく、影の王者と言えるが、大企業を前にすると、やはり太刀打ちできない所もある。そのため、日本は早い段階から中小企業を支援するために法を設け、中小企業庁を設立したのだ。法を制定するだけでなく、それに沿った体制もしっかり整えている。県と地域ごとにも中小企業の経営をサポートする支局を設置している。支局には中央局から若い公務員が派遣され、財務や技術の専門家を採用して中小企業をバックアップする。そして、都市には中小企業のための大規模な技術研究開発センターも設けられている。これらの取り組みは、中国政府も参考にするべき点が多い。
(日本大学商学部:李克教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年1月11日