日本の菅直人首相は13日、原子力への依存度を段階的に引き下げ、最終的には原発ゼロ社会を目指すとする「脱原発」宣言を正式に発表した。菅首相による最近の一連の脱原発発言は、これによってクライマックスに達した。脱原発はすでに幅広い民意となっているが、支持率が右肩下がりの菅首相がその大任に堪えるのは難しそうだ。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
菅首相は当日首相官邸で「福島第1原発事故によって、原子力の安全性は保証できないことが明らかになった。日本は従来の原子力政策を変え、原子力への依存度を計画的、段階的に引き下げ、再生可能エネルギーと省エネの普及を促す必要がある」と述べた。これは半世紀余り続いてきた原子力推進政策の転換を意味する。
日本は原発を国家戦略と位置づけ、一貫して推し進めてきた。2005年制定の原子力基本計画は、総電力に占める原子力発電の割合を2030年までに現在の約30%から50%に引き上げるとしている。民主党は09年の政権発足以来、自民党政権時代の原子力政策を基本的に踏襲し、2020年までに原子炉14基を新設する方針を打ち出していた。
だが福島第1原発事故によって原子力安全神話は崩壊。従来の原子力戦略は大打撃をこうむった。事故処理の長期化にともない、国民の間で反原発の声が高まってきている。朝日新聞の世論調査では、脱原発をはっきりと支持する声が77%に上り、反対はわずか12%にとどまった。民意に沿うため、そして支持率回復の政治的思惑から、菅首相はこの2カ月近く立て続けに「脱原発」の動きに出ている。
日本には現在54基の商用原子炉があるが、このうち35基が地震による損傷や検査のため運転を停止している。現在稼働中の原子炉も来年夏までに続々と検査に入る。これらの原発が政府の定める「ストレステスト」に合格しなかった場合、または地元地方自治体の同意を得られなかった場合、全ての原発が停止する事態が起こり得る。
脱原発は民意には沿うものの、政界や経済界は依然強く抵抗している。野党陣営では社民党と日本共産党は脱原発宣言を歓迎しているが、最大野党の自民党は菅首相の動機に疑問を呈し、その背後には首相の座に居座る「謀略」があると考えている。与党の民主党内でも今後の原発政策について見解が一致していない。経済界は脱原発によって電力不足が悪化し、経済・産業活動に長期的な悪影響をもたらすことを懸念している。日本経済研究センターの報告は、原発停止による電力不足によって2012年に日本経済は2ポイント下落するとしている。
菅首相は脱原発宣言で大雑把な目標を提出しただけで、具体的なロードマップは示していない。また、脱原発の助けを借りて支持率向上という虫のいい計算も必ずしも効を奏していない。朝日新聞の最新の世論調査では、脱原発を支持した回答者の中でも内閣支持率はわずか15%だった。また、脱原発宣言の当日に民主党議員11人が連名で菅首相の即時退陣を求めさえしている。
福島第1原発事故後、欧州のドイツ、スイス、イタリアで脱原発の風が吹き荒れたが、当の日本では原発の存廃をめぐる争いが始まったばかりだ。日本の原子力政策は十字路に立たされている。道案内人としての菅首相の任務は極めて困難で、行く末は予測し難い。
「人民網日本語版」2011年7月15日