今年61歳を迎える井村雅代氏は日本及び世界のシンクロナイズドスイミング界における伝奇的な人物だ。30年以上にわたってシンクロのコーチを務め、奥野史子、立花美哉、武田美保ら日本シンクロ界のスターを数多く育てたほか、日本チームを率いて6大会連続でオリンピックに出場し、メダル計11個(銀メダル4個、銅メダル7個)を獲得。かつて日本では無名だったシンクロというスポーツを知名度の高い競技へと発展させた。北京五輪の開催前、井村氏は様々な意見がある中、中国代表チームの監督に就任した。その後、現在上海で行われている水泳世界選手権に至るまで、井村コーチ率いる中国代表チームは絶えず新たなブレークスルーを果たし続けている。新華社が伝えた。
井村氏は北京五輪開催前に中国のシンクロチームの要請を受けて、中国代表チームのコーチに就任。2007年1月から北京五輪終了まで中国代表チームを指導した。彼女の決定は、日本国内で大きな波紋を呼んだ。なぜなら当時、中国と日本は直接的なライバルであり、彼女は日本チームの事情と選手の能力を知り尽くしていたからだ。彼女の「海外進出」に不満を感じた日本メディアと国民も多く、「裏切り」、「売国奴」とののしる人までいた。しかし井村氏にも中国チームのコーチとなることを選んだ理由がある。井村氏は日本メディアのインタビューに「中国チームのコーチとなることは、日本人コーチの世界的な地位向上のきっかけになると思いました。現在、シンクロ界では主にロシア、米国、日本といういくつかの流派があります。もし中国からの要請を断れば、ロシア人コーチが中国に行くでしょう。そうすればロシア流が注目を集めます。北京五輪は日本流のシンクロを世界にアピールする絶好のチャンスです。ですから、中国からの要請を断るわけにはいきませんでした」と答えている。
井村コーチの指導の下、中国チームは北京五輪で初のメダルを獲得、シンクロという競技も中国メディアに盛んに取り上げられた。一方の日本チームは、デュエットで銅メダルを獲得したものの、井村コーチの到来に伴い、天秤が徐々に中国チームに傾き始めていることは明白だった。2009年のローマ世界水泳選手権では、中国チームは銀メダル1個、銅メダル4個と、歴史的な成績を収めた。今回の上海水泳世界選手権では、井村コーチは「ローマ超え」を目標に掲げたが、競技開始からわずか4日で中国チームはこの目標を達成してしまった。井村コーチの指導により、中国チームはすでに競争力の高い強豪チームに成長したと言える。
能力と魅力に溢れる外国人コーチと、体制にサポートされ、才能もあり努力家の中国シンクロチーム。この2つが一体となれば、中国チームがいつか頂点に上り詰めることも期待される。しかし、中国チームが金メダルを獲得するにはまだ大きな壁がある。ロシアチームだ。井村コーチはこれまで、中国チームのライバルはロシアだけではないと強調してきたが、中国チームにとって最大のライバルはやはりロシアチームだ。井村コーチは中国チームを率いてロシアを目標に歩みつづける。井村コーチとともに夢を追いかけ、ロンドン五輪に期待しようではないか。
「人民網日本語版」2011年7月22日