日本が防衛白書を発表するのは毎年のことで、本来驚くほどのことではない。だが今年はことのほか関心を呼んでいるようだ。2011年版防衛白書は2日に発表されるや、中国から厳しい非難にさらされた。韓国政府も「竹島(韓国名:独島)は日本固有の領土」との記述に抗議した。新防衛白書の発した危険なシグナルに人々は懸念を抱いている。(文:劉江永・清華大学現代国際関係研究院副院長。「人民日報海外版」コラム「望海楼」掲載)
第1に、新防衛白書は昨年末に発表された防衛計画の大綱を実行するため、中国を主要防衛対象としてマークしている。引き続き「中国の国防政策の不透明性と軍事動向は日本を含む地域と国際社会の懸念事項となっている」などと強調するのみならず、新防衛計画大綱の「動的防衛力」の運用について説明を深め、南西方面の防衛態勢の強化を強調している。これに基づき日本は将来、必要時に迅速に南西方面へ軍事力を動員し、防衛戦に投入できるよう、エアシーバトルと統合動員能力を強化する。新防衛白書はサイバー攻撃を防ぐことの重要性も強調。「世界の多くのコンピュータシステムが中国国内からの侵入、攻撃目標となっている」との米国防総省の報告を引用している。ここからも、その主な矛先が中国に向けられていることがわかる。
第2に、新防衛白書は日米間の溝を埋め、地方自治体を抑えつけて米軍基地を引き続き受け入れさせるため、「中国脅威論」を入念に作り上げている。普天間基地移設問題をめぐる日米間の溝は遅々として解決を得ていない。昨年、日本側は米側の高圧姿勢の下で妥協し、名護市辺野古地区への移設で合意した。だが地元住民の反対を受け、2014年までとしていた移設計画を変更せざるを得なかった。防衛省が「中国脅威論」を入念に作り上げ、大げさに表現する目的の1つは、地元自治体と住民に負担を引き受けさせ、米軍基地の長期駐留を認めさせることにある。中日関係が改善へと向かっていた昨年5月、米国はなんと米日安保条約の釣魚島(日本名・尖閣諸島魚釣島)への適用を公に承諾した。それから間もなく日本は後ろ盾があれば怖くないとばかりに中国漁船を拿捕したうえ、いわゆる「中国の脅威」を大げさに訴えた。今年3月に東日本大震災で福島第1原発事故が発生すると、米国の空母は迅速に汚染海域を離れた。米側の定めた避難区域は日本側を大きく上回るものだった。その後、在日米軍のイメージを「救う」ため、日米両国は在日米軍による救援活動「トモダチ作戦」を入念に宣伝した。日本人に米軍の継続駐留に同意させることが目的だ。新防衛白書はこの作戦を特に強調している。