劉代表は取材に対して、「今回来日した目的は、三菱側が1日も早く和解交渉に応じるよう促すこと。中国国内で生存している被害者は今全員80歳を超えており、生きているうちに和解成立できないのではないかと非常に焦っている」と訴えた。当時、強制労働から脱走し、北海道の森の中にある洞窟で13年間生活したという父・劉会長の話に及ぶと、劉代表は「和解は中日両国間にある恨みをなくすための主張。補償問題で60回以上来日したが、全く進展しない」と涙ながらに語った。
一方、傅弁護士は「三菱側の態度が4年前と比べて大きく軟化しており、少しほっとしている。以前は賠償の話になると言葉を濁していたが、今回は積極的に補償問題に言及し、交渉や具体的な業務に着手している」と三菱側の態度に一定の評価をしている。
三菱側が態度を軟化させた理由について、傅弁護士は「山東省の強制労働被害者は昨年9月17日、山東省高院で三菱マテリアルを相手に損害請求訴訟を起こすと同時に、中国国内で弁護士協会と裁判官協会を通して、三菱側の中国支社に交渉を呼びかけた。これにより、中国強制労働被害者の和解案と三菱側の中国における利益につながりができ、話し合いによる和解の実現に向け動き出した」と同弁護士団の活動の成果を強調。
昨年、戦時中に広島県の建設現場に強制連行されて重労働を強いられた中国人被害者と施工業者の西松建設(本社、東京都港区)が、一人当たり5万元(約60万円)の補償金を支払うことで和解した。和解後、「西松建設」は被害者に対して、正式に謝罪し、記念碑も建てられた。これが、モデルケースとなり、今後、三菱との和解案が成立すれば、強制労働被害者と他の大企業との和解交渉はさらに加速する見込み。
背景:
第二次世界大戦中、日本国内で不足する労働力を補うため、日本政府は「中国人強制労働者の導入」に関する決定を閣議で下した。その後、日本政府と関連の日本企業は共に約4万人の中国人労働者を強制的に日本に送り込み、日本全国135カ所の現場で強制労働を課した。強制労働で約7000人もの人が命を落としたとされている。三菱マテリアル(旧三菱鉱業株式会社)も当時、中国強制労働者2709人を9カ所の工事現場で働かせ、468人が命を落とした。
「人民網日本語版」2011年11月10日