米国は元々新概念を最初に提起する国だったが、これも国力の衰退に伴い、政治・経済分野の新概念においても他人のふんどしで相撲を取るようになった。TPPはもともとシンガポールやチリなど小国間の経済協定で、米国とは何の関係もなかった。オバマ大統領がアジア回帰を決定した時に目をつけたのがこのふんどしだ。大小に構わず、先にこのふんどしを締めて土俵に上がり、相撲をしてみようというのだ。
日本は元々TPPに少しも興味はなかったが、米国がアジア回帰を図り、かつ陰に日向にTPPを中国と対峙するための道具と見なしているのを見て、うまい具合に国内の嫌中感情と図らずも一致することを感じ取った。まず発行部数最大の新聞が「中国牽制」の主旋律を奏で、次に野田内閣がTPP交渉に参加する雰囲気の醸成に取りかかった。さながらTPPは天下の形勢を一変させる重要政策になったかのようだった。
TPP参加によってもたらされる利点は、日本の最有力紙の報道を見ると、数千億円の関税の減免だ。日本政府の報告は、10年でこの効果が得られるとしている。これは大学を卒業したばかりの人に給料は数千元だと言っておきながら、ただし10年間の総額だよと最後に告げるようなもので、全く泣くに泣けず、笑うに笑えずだ。
日本の最有力紙が主張する、TPPを利用して政治・外交面で中国を牽制するとの観点にどれほど実現可能性があるのかについては、ここでは余り語らずにおこう。経済面を見ると、日本の貿易全体の26.9%を中日韓の貿易が占める。中韓を除外すると、TPP圏内の国との貿易は全体の24.6%を占める。両者は大差ない。
だが今後日本が米国との貿易拡大を図っても余り大きな余地はないようだ。中韓との貿易拡大こそ、日本が必ず通らなければならない道だ。回り道をし、目先の小さな利益のために大きな利益をなくすのか。最終的にどのような選択をすべきなのか、日本政府は明確な見解を持つべきだ。