文=コラムニスト・陳言
訪米から帰国した後、「この先に向け、静かに想を練ろうと思う」と完全休養を宣言した野田総理は、ゴールデンウィーク後半に首相官邸に姿を見せることはなかった。だが、決して心を休めることは出来なかったようだ。なぜなら、5月6日、大型連休が明けた日から、原発再稼働問題、消費税増税問題、小沢一郎民主党元代表グループの攻撃の激化といった3つの問題が、政権交代後1年にも満たない野田総理を待っていたからだ。
9月に行なわれる民主党代表選で野田総理に勝算はあるのか?2013年の衆院選まで民主党政権がもつのか?今の段階では誰も確信できない状態になっている。
◇野田総理の脳裏にあるもの
日本国内の原発で唯一稼働していた北海道電力の「泊原発3号機」が5月5日に発電を停止した。これを受けて日本国内にある54基の原発がすべてストップしたことになる。
原発からの電力供給がなくなり、日本の総発電容量は一気に30%下がった。国民の中には「日本経済も終わりだ」と悲観する人も少なくない。
昨年の大地震の後、中国社会科学院日本研究所の張季風研究員は「日本の全発電所の発電能力は電力消費量を十二分に賄える水準を維持しています。また、休眠させている火力発電、水力発電などを再稼働させれば、それほど深刻な電力不足に陥ることはないでしょう」と述べている。
だが、野田総理にとって、そんな単純なことではないようだ。ここで日本が原発を切り離してしまえば、今後、軍事兵器を含む原子力技術を保有することがかなり困難になってくる。それに、停止した原発を再稼働する際、国内外からの批判の矢面に立たねばならない。
原発を維持していくことを如何に日本国民に納得させるか?これこそが野田政権の目下の最大課題だと言えよう。
◇「政治生命を賭けた」消費税率引き上げ