文=コラムニスト・陳言
日本の警察当局は今年6月4日、オウム真理教元信者の菊地直子容疑者を逮捕し、日本社会に衝撃が走った。1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件(13人が死亡、5510人が負傷)は、戦後最大の宗教事件として、日本社会に苦しみを与え続けている。オウム真理教が日本人の心に落とした影は、今後も消えることがないだろう。
90年代前半、日本社会はバブル崩壊後の失意と困惑の最中にあり、各宗教組織が宣伝を強化した。オウム真理教はその内の一つだ。
オウム真理教はその発展と拡大の歩みにおいて、周辺住民との対立を深刻化させていった。オウム真理教は地下鉄サリン事件の発生前からも、多くの失踪事件との関与を疑われていた(坂本弁護士一家殺害事件、松本サリン事件等)。
1995年の事件発生前、オウム真理教は宗教のヴェールをまとい、堂々とテレビ出演し弁論を行なっていた。その殺人的な性質は、長期間に渡り見落とされていた。オウム真理教による同事件の発生に対して、日本のマスメディアは一定の責任を負うことになるかもしれない。
日本のマスメディアは松本サリン事件の発生後、警察当局が有力な容疑者としていた河野義行氏にスポットライトを浴びせた。河野氏は化学の知識があり、家に化学薬品が保管されていたため、容疑を招いた。しかし河野家に保管されていた全ての化学薬品を用いたとしても、一匹のネズミを毒殺することさえできないことは、専門的な知識を持っていれば分かることだ。しかし日本のマスメディアは警察側の容疑者認定に疑問を挟まず、誤った情報を軽率に信じ込み、1995年の悲劇を再演させることとなった。