東京などの大都市には実は、人々の目につかない場所に、雨水を貯留したうえで直径10メートル前後の地下トンネルを通じて速やかに大型河川に排出することのできる、極めて強大な都市行政施設が多くある。国道の下には、しばしばこうした大型排水トンネルが敷設されている。こうした排水トンネルは最終的には海へ流れ込む自然河川と合流する。大雨による大規模冠水が予想される場合は「通常数台または10数台の大型ポンプを同時に稼働する。こうしてはじめて大雨が市民生活に余り大きな影響を与えないようにすることができる」と幸田氏は説明する。ポンプは全てディーゼル駆動だ。大雨は往々にして都市停電を伴うので、ディーゼル駆動にしてはじめて万に一つの失敗もないようにできるのだという。
私は大型排水トンネルの工事現場も見学したことがある。トンネル内はトラック4台が並走しても確実に余裕がある広さだ。このように大きな排水トンネルを東京の重要な道路の下に敷設する必要があるのかと最初は考えてしまうだろう。100年に1度も使わないかもしれない。だが東京都の後の状況を見ると、こうした重要な施設は絶対に必要なのだ。こうした施設があるおかげで、東京では雨水が生活排水や工場排水とは別に速やかに排出され、交通や市民生活の安全が確保されているのだ。
表面だけ見ると、東京の高層ビルは北京や上海に数で及ばないし、外観の多様性にいたってはとてもモダンとは言えないが、道路や橋の建設、そして巨大な地下排水プロジェクトや大型ポンプの設置等々を見ると、東京のスムーズな交通や市民生活の安全は、地上からは目に見えないこうした都市行政施設によって保証されているのだ。