王:古い中国に関心があって、馴染み深いということは歴史的な敬意があるからだとわかりますけれども、新しい中国にあまり関心がないというのはどんな理由でしょうか?
河田:これは難しい問題ですね。僕という人間の人格は、3分の1は同志社中学の毎朝の礼拝で身についたキリスト教で、3分の1は京都の法然院という寺院のお坊さんから学んだ仏教で、3分の1は中国哲学を勉強して修得した儒教です。日本は中国からたくさんのものを学んできました。だが、日本と中国では同じ儒教でも違いがあります。たとえば儒教で「忠」は日本では藩主や天皇に対する忠、「忠」のほうが「孝」より価値が高い。父親、母親に対する「孝」より藩主や天皇に対する「忠」の価値が上です。しかし、中国では逆で、父親、母親のほうが大事で、皇帝につかえる場合も、だめな皇帝ならば官僚をやめて故郷に帰ってもいい。日本ではそうしません。そう考えると日本の儒教と中国の儒教は違うでしょう。
王:今、先生は私立大学全体を束ねるお立場におられて指導的なお仕事をされているわけですが、今後、先生はどのように日本の若者たちへの教育に関して、どんなことをおやりになりたいとおもっていらっしゃいますか?
河田:今は日本には4年制の大学が605校、短期大学が350校あり、そして、毎年日本の高等学校を出る生徒は大体120万人います。高等学校を出た学生が大学に進学する率は56%です。広く見ると、日本は47都道府県ありますが、26の都道府県では50%以上大学に進学するけれど、それ以外の県では40%台です。沖縄県とか岩手県では30数%しか高等学校から大学に進学しません。これでは進学率が低いと思っています。中国でも、大学進学率がだんだん増えている。台湾では95%、韓国でも70%以上の高校卒業生が大学に進学します。だから、日本でももっと大学進学率を上げる必要があると思います。それから、もう1つ、日本の隣国である中国、アメリカとか大きな国はそれぞれ資源がありますが、日本はそういうものがほとんどない。農産物の自給率なども低い。日本がこれから21世紀に存在感を持つためには、何が必要かといえば、それは教育です。頭で勝負していかなければならない。そういう時代だから、日本政府はもっと教育に力を入れお金を投資して、世界で通用するような若者を育てていかないと、日本はますますだめになります。私立学校は幼稚園から、小学校、中学校、高校、大学、約1万4400校ありますし、そこに勤める教員、職員、その家族を合わせると127万人以上になります。私のいる組織は、年金や健康保険や様々な福祉事業などで、私学に勤務する人たちのサポートをしています。重要な仕事だと思っています。日本の私立学校で少しでも日本の役に立つ日本人を、そして世界で通用する人材を養成したいと願っています。
最後に、「今、日本の企業、パナソニックなどでは、日本の学生より外国人や留学生を多く採用しているという事実があります。中国人留学生がもつ価値は日本社会でもアップしています。日本人の学生より一生懸命に勉強する学生諸君も多く、高く評価されています。パナソニックの採用を調べたら、一昨年の同社の採用では、外国人留学生が8割ぐらいになっていました。日本の企業は中国および東南アジアからの留学生をたくさん採用する時代がはじまっています。」という言葉で、中国人留学生にたいする期待を表明した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年1月9日