日中交流研究所長 段躍中
第8回中国人の日本語作文コンクール表彰式で次回テーマを発表
日中両国はまた冬の時代に逆戻りした感があります。1972年の国交正常化から四十年経ち、今年は日中平和友好条約締結から三十五年の節目の年です。
両国の間には氷が横たわり始め、寒風が吹いて、交流の場を狭めようとしています。両国には、こうした状況を憂えている人たちが大勢います。若い人、学生、両国で仕事をする社会人、社会経験が豊かで日中交流の大切さをよく知る中高年の人々。皆、この冷え始めた関係が心配で、もう一度速やかに正常に戻したいと願っています。
この張り始めた氷を脇に追いやり、溶かす努力は政府、外交関係者だけに任せるのではなく、一人一人の市民が進んで担う必要があります。市民同士の草の根の交流と相互理解こそが、新しい前向きのエネルギーを生むと確信しています。
思えば、四十年前の国交正常化の時代も、閉ざされた外交関係を正常な軌道に復帰させた陰には、文化、スポーツの交流から始めて、一歩一歩正常化への道を付けていった、両国の先人たちの尊い努力がありました。囲碁愛好者の交流などに始まり、ピンポン外交、京劇と歌舞伎人、また音楽、舞踏、バレー演技者そして作家、文学者、経済人の交流と、往来の場が年ごとに広がり、政治レベルの正常化につなげたのです。
両国の関係が揺らぐ今こそ、普通の市民、文化人、そして次世代を担う若い人々が、原点に立ち返り、正常化へのスタートボタンを押し直す必要があります。また、その近道は、これまで交流に力を入れ、その大切さを知る人々が、これまで得た感動を人々に率直に語り、伝える努力、活動の中にあると、われわれは信じます。