文=奥井禮喜氏
安倍首相は、薄氷を踏む思いで慎重に政権運営するという。選挙戦ではとかく高揚して本音も出るし、リップサービスもあるし、煽動的にもなる。内外政治本番は、薄氷の初心を忘れず努めていただきたい。
人間にとってもっとも大切なものは他者の信頼である。人間が集まって形成している国家同士の関係もまた同様である。昨年来の中国との関係を直視すれば、先ず日中関係改善に着手するべきである。
政権交代は関係改善の絶好の機会だ。水面下ではおおいに努力していると思いたい。しかし、表面的な動きは、他国の不信や疑惑を拡大するように見えることが多く、目下大いに失望させられている。
首相が交代するたびに、徳川幕府時代の参勤交代よろしく真っ先に訪米した。これはかつての自民党政権時代、自民党内部にも懐疑と批判の声が少なくなかったのである。
今回もまた訪米を最優先に考えたらしいが、相手先の都合で後回しになった。民主党時代にギクシャクした日米関係を再建すべしとして、日米同盟強化論が盛んに喧伝されている。いわく、日米同盟強化で日中関係を改善するというのであるが、これは米国にとってもおおいに迷惑だろう。
そもそも日中国交回復40周年の節目に、石原氏が突然尖閣(中国名・釣魚島)購入を公言した。政府はその火消のために国が購入するとしたはずで他意はなかったはずである。中国から見れば、40年前から「棚上げ」してきたのであり、単純に了解というわけにはいかない。中国で抗議運動が勃発して大騒動になった。