文=奥井禮喜
デビッド・ロイド・ジョージ(1863〜1945)は英国自由党を率い、1916年から1922年まで自由党・保守党連立内閣を組織した。彼の演説は白熱の噴火するごとき雄弁であったらしい。
「アイルランドが自治権を要求する。なるほどスコットランドも自治権がほしい。同様ウェールズも自治権がほしい。ランカシャーもほしい」。そこで演説台をドンと叩く。
野次が飛んで「地獄にも自治権がほしい」。すかさずロイドは「誰もが自分の住んでいるところに自治権がほしいのだ」と切り返した。地獄の住民は頭を掻いたというお話。
南ウェールズで講演台に立つとき、司会者が「私はロイド氏の信奉者でお目にかかるのを楽しみにしていたが、今拝見すればずいぶん小さいお方で」云々の紹介をした。司会者は大柄な男であった。
ロイドは登壇するや「ただいまご紹介いただいた」と切り出し、「南ウェールズでは人間の大きさを顎から下で測るらしいが、私の出身の北ウェールズでは顎から上で大きさを測ります」と大きな頭を振った。場内大爆笑。
トーマス・ウッドロウ・ウィルソン(1856〜1924 在任1913.3.4〜1921.3.4 民主党)は米国第28代大統領(民主党)である。共和党がセオドラ・ルーズベルトとウィリアム・タフトでまとまらなかったので大統領を射止めた。
その前はプリンストン大学総長で、政治学博士である。当初第一次世界大戦不参加の方針だったが、ついに対独宣戦布告(1917.4.6)し、戦後は「14カ条平和原則」を引っ提げて国際連盟創立に尽力した。