文=奥井禮喜
(撮影者:片山洋子)
古い友人の純ちゃんが働いている福島県岳温泉「扇や」旅館へ来た。高崎からT氏の車でざっと3時間の旅。東北自動車道はこの4月と5月に岩手県宮古市へ復旧応援に出かけたので少し見覚えがある。
道路は実に快適ですっかり地震のことを感じさせないほどに復旧した。青空が広がり、たいした会話ではないが話が弾んであっという間に目的地に到着した。清楚で閑静な温泉街の高台に「扇や」旅館があった。
出迎えてくれた純ちゃんは元気そうで懐かしく嬉しい。純ちゃんはかつて新宿歌声喫茶でバーテンをやっていた。もう30余年前の出会いだ。それから有為転変あり、お付き合いが消えたのだが、某日、私が講演に出かけた那須の会場でばったり再会。当時彼は某食品チェーン会社に在籍中で、組合リーダーになっていた。それからまたまた有為転変あり、十余年前郷里の福島へ帰りいまの旅館で働いておられる。
今年は3.11の被災で旅館も大きな災害を被った。なにしろ当方非力につき気はもめるが何ごとか応援できるというわけでもなく、もたもたしていたのであるが、ようやく今回お見舞いかたがた有志4人で泊まりにきた。
仕事の合間に少し話を聞く。被災当時は旅館の一部を被災者5世帯に充てておられた。いまは旅館の設備も復旧して平常経営である。二本松駅近くには浪江町の臨時役場があり、仮設住宅も建築された。まだまだ復旧完了とはいかない。今年を忘れず精進しなければとつくづく思う。