文=奥井禮喜
東京電力による福島原子力事故調査報告書が公表された(6/20)。
朝日新聞は「東電事故調査−この体質にはあきれる」と題する社説を掲げて噛みついた(6/22)。報告書を要約して「原因は想定を超えた津波にある。東電の事後対応に問題はなかった。官邸の介入が混乱を広げた」とする。
そして「自己弁護と責任転嫁に終始する姿勢にはあきれるほかない」「こんな会社に、原発の再稼働など許されない」と一刀両断に切り捨てた。
大方の人は膨大な報告書をお読みになるまい。ひょいちょいと新聞の《要約》を眺めてわかった気分になるかもしれない。朝日が原発ゼロを掲げているとはいえ批判は極端過ぎる。世論操作の危惧すら感ずる。
大事なことがたくさん書かれている。ポイントは、まず津波・地震に対する知見である。それには科学面と技術面と二面ある。
科学面、地球科学分野において、太平洋プレートの動きに対する知見が十分でなかった。東北を縦断して、長さ500km・幅200km、最大すべり量50m以上の震源域をもつM9の巨大地震が発生するとの可能性を予測できなかった。——これは事実である。津波に責任を負わせているのではない。
1960年代末にプレートテクトニクス理論が登場したが、わが国においては戦前の資源探査の地質学が長く尾を引き、大学の研究教育体制に反映したのは1990年代である。出遅れているというしかない。