日本企業などに対する暴動を見て、今度は日本国内では「やり過ぎだ」という反発が発生した。さらに、日本が実効支配論を一歩進めたのだから、中国も抗議の意思表示を継続する。まさに緊張の膠着状態になっている。
まず日本が中国との間で、問題解決のための着実な行動を起こしているのであればともかく、膠着状態のままで日米同盟強化を推進しようとすれば、いわば日中の紛争に米国を引っ張りだす算段だと見るのが常識である。
これでは日米同盟という看板のもとに、「問題解決、お願い」とばかり抱き着くようなもので、そんな参勤交代に来てもらいたくないのは当然だ。
敗戦後の日本は、外交といえば米国の顔色をうかがうことみたいであったが、それからすでに67年。こんな状態では、他国から見れば、日本は米国という虎の威を借る狐である。
外交といえば直ちに国益という言語明快・意味不明の言葉が濫発される。論理無思考の結果は、感性的にナショナリズムを刺激するから、格別要注意である。選挙戦での高揚が首相の頭と手足を縛っている危惧もある。
概して、防衛には力の均衡論が振り回される。国益を考え、国を守るためには軍事力を高めなければならないとするのであるが、すでに核兵器が登場してオーバー・キルになっている時代に、いかにも古色蒼然としている。
力の均衡論は永久不変の論理ではない。力の均衡論を原理主義的に構えている限り、外交の方向が見えなくなる。世界の現実を進化させてきたのは、理想に向かう健全な精神が生かされたからである。