文=コラムニスト・中川幸司
中国では両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)が開かれ、中国共産党の党要綱・方針などからさらに具体化し、公式的に新しい国家政策が表明されています。これから習近平国家主席、李克強国務院総理の体制となり、中国国家運営がなされていくわけですが、我が日本国でも、近年では珍しく安倍内閣が政権発足後数ヶ月の内閣支持率を常に高水準で保っており、日本も中国も目下安定的政治状況ということができるのではないでしょうか。TPP参加に関する業界団体調整関連で多少ガタつくものの、夏の参院選までは少なくとも安定飛行で行くのは、安倍総裁率いる自民党としては必至の選択といえるでしょう。
僕は先月は日本と中国に関する勉強会に比較的多めに出席していました。また、日本と中国の大手企業幹部のみなさんとお話する機会も何度かありましたが、昨年よりホットなテーマとなっている尖閣諸島(中国名・釣魚島)の問題については、我々民間の雑談でも「棚上げ」の話題でありまして、とくに言及されることは少なくなったように思われます。当該問題については、両国が抜本的な解決策は近い将来では見出すことができないだろうというのは(おそらく双方の政府にとっての)既定路線でありますが、民間の産業、学術の立場にいる方々でも「その話題は避けておこう」という雰囲気は、ある意味消去法的最善の選択肢でありまして、実質的な交流が生まれることとなっています。
これはなんとなーく、僕が肌で感じた皆さんのテンションですが、そこで最近、再び新しい日中交流のシンボルとなるテーマを探す作業が有識者の頭のなかで始まっている気が致します。外交関係が冷えきっているのはもちろんのこと、それにつられて文化交流もストップ、そして反日活動が市民に広がり積極的なビジネス交流ができなくなっているのであれば、じゃぁそもそも日中交流って何なの?という話ですね。
まず、「経済交流が両国の発展にとって有効だ」とか、「米国だけに依拠しないアジアでの外交交流が新しい国際パワーバランスを生み出す」とか、そういった発展的な議論は、尖閣問題が発生する前の水準ほどに回復していません(これまでのこちらのチャイナネットさんのブログでも僕が書いたところです。)。上述の「民間交流レベルの棚上げ論」的風潮の影響から、日中の政治経済交流は積極的にやるほうがメリットあるというロジックは表出せずに、むしろ、消極的に日中交流レベルが低下することより交流を保っていたほうがお互いに便益があるのだ、というロジックがよく話題にされるような気がします。
中川コージのブログ『情熱的な羅針盤』