ノーベル経済学賞の受賞者でコロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏はこのほど、アジア協会がニューヨークで開催した会議で、量的緩和政策による経済促進成功の可能性は、米国より日本の方が高いとの見方を示した。米国経済が消費を動力の中心としているためだが、スティグ リッツ氏はこうした仕組みは持続可能なものではなく、米国は、経済に対する投資の促進作用をさらに強化すべきと見ている。
▽日本の量的緩和は“効果あり”
スティグリッツ氏によると、日本経済は80年代から低成長の状態に陥った。米国はここから教訓を汲み取ることなく、同じ失敗を犯している。 日本の労働人口が縮小し、米国の労働人口が拡大していることを考慮すると、ここ数年の日本経済の発展は米国を上回っているとも言える。
日銀新総裁の黒田東彦氏はこのほど、金融緩和政策の規模をさらに拡大していくことを宣言した。その幅は市場の予測を超えている。黒田氏の取った政策は連邦準備制度理事会(FRB)のそれに類似しているが、スティグリッツ氏は、量的緩和政策が経済促進に成功する可能性は日本の方が高いと見ている。
スティグリッツ氏によると、第一に、日本の金融政策と財政政策はより効果的な結合が可能である。第二に、量的緩和は事実上、各国間の通貨戦争であり、自国通貨の引き下げによって輸出を促す試みである。日本の製造業は世界トップの位置にあり、量的緩和政策による日本円レートの低下は、日本企業の輸出に有利に働くと見られる。
一方、米国の量的緩和政策は現在までにあまり効果を上げていない。この政策は事前に期待されていた効果を実現できておらず、金融業界が直面 している多くの深刻な問題を効果的に解決するものとはなっていない。例えば、米国の量的緩和政策の意図は金利の低下を意図したものだったが、 銀行が融資先に対して付ける条件が増やされているため、援助の必要な中小企業が融資を受けられないといった状況が起こっている。米国の余った資本は逆に、資金を特に必要としていない新興市場のような場所に流れ込んでいる。S&P500やダウ平均などの指数が市場最高値をつけていることが話題となっているが、どれも大企業の株式であり、こうした大企業の利潤の成長は主に、新興市場での業務の成長によるものである。
▽米経済の復活には投資強化を