日中社会学会・陳立行会長
日本は民主化への道を歩む過程で、他の国同様多くの代償を払ってきた。明治維新以降、西洋の民主主義思想や政治制度が日本に流入し、明治時代には幸徳秋水らのような社会主義者も登場したが、保守的な勢力との対立の中で処刑された。1889年、日本には選挙制度が導入されたものの、選挙権はある程度の財産を保有する25歳以上の男子に限られていた。
終戦から70年近くが経過し、民主的な政治体制が確立されたほか、政治に対する世論や法律による監視体制も絶えず強化されており、中でも教育分野においては平等や民主の理念があらゆる面で深く浸透している。
市場システムが生活に浸透し、その上日本人の細部にまでこだわる精神が至れり尽くせりの行き届いたサービスを確立したことで、消費者が常に最も尊重される社会が形成された。また、何十年も続いてきた終身雇用制度や年功序列の給与システムにより、大多数の日本人は規律正しく会社に行き、真面目に仕事をしていれば安心して生活ができるようになった。消費や教育、医療や昇進のチャンスなどの面で人に頼み込んだり、コネを使ったりしなくても良くなった。自分のいる小さい環境の中でストレスなく仕事できれば、問題なく悩みなく生きていくことができる。日本はそのようにして、徐々に「何事も他人に頼まない」社会になっていった。
そのような環境の中、多くの人が集団生活を嫌い、他人との関わりを疎ましく感じるようになり、自分の両親や兄弟との交流さえ煩わしく思うようになってきている。生活で些細な問題に直面したときでさえ、「面倒くさい」というのが若者らの口癖になっている。「人に迷惑をかける」事もまた、日本人にとってはタブーなことである。多くの若者が人に会ってもあいさつをせず、毎日同じエレベーターに乗ったとしても知らない人同士のように関わろうとしない。