そうして「日米同盟」の天秤が少しずつ傾き始めている。現に一部の米国の元高官は日本側の期待に歩み寄るべきと主張している。キャンベル・前米国務次官補は今月、「防衛と安全保障の責任を担う米国防省とホワイトハウスの官僚および国務省の参事官らは日本が自らの能力を拡大するために行っている努力を支持し、必要な措置だと強く認識している。中国の軍事力が増強される中、日本が自衛隊の能力を向上するのは正しい」と述べた。
安倍首相の国連総会での発言が米国への回答であることは明らかだ。ただ米国側は声高なのに対し、日本は集団的自衛権の解禁に向け「人に受け入れらる」より多くの理由を探している。安倍首相の入念な包装によって憲法改正の目的は、日本が「世界の平和と安定により積極的に貢献する国」、「積極的平和主義の国」になるために変わった。これまで口をそろえてきた日米の言い分から、「日米同盟」が却って日本が利用するカードになってしまったことがわかる。
憲法改正のハードルは非常に高いが、安倍首相は米国の弱点を突いて、外部の圧力を軽減した。一方、国内では五輪招致の成功と経済状況の好転で彼が進める右傾化政策の妨害がかなり減った。
安倍首相の強気の態度と小知恵が隣国の不安感情の高まりを刺激し、東アジアの安全を危険な未知数の方向に押しやっているといえる。ただ日米がこれまで心を一つにしたことはなく、一つの船の上にいるとしても、実際にはしっくりいっていない。数十年ずっと我慢してきた日本が何を欲しているかは一目瞭然だ。
過去にも、現在にも、将来にも米国が東アジアの秩序の安定を決める重大な責任を担っていることに変わりはない。戦後の秩序に不備はあるが、やはり東アジアの平和と安定の礎である。米国は東アジアの将来性について、均整戦略を弄ぶでも、現実主義の論理に振り回されるでもなく、正確に評価するべきだ。それは結果は誰にも予測できないし、米国が自分のことだけ気にかけることも不可能だからだ。(海外網特約評論員 高望)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年9月30日