NHKによる中国の宗教問題に関する報道にも、読売新聞・朝日新聞による中国の環境問題や政治動向に関するインタビューにも、一つのものが欠けている。それは石橋湛山氏の時代の中国に対する希望、中国と共に戦争のない平和的に発展する世界を築くという願いだ。
10年前、日本の政治・経済関係者および一般市民は中国について語る際に、中国の魅力的な労働市場や、日本が提供する資金・技術に対する中国の歓迎などについて触れていた。日本は当時中国よりも強い力を持っていた。我々が中国について語るにせよ、彼らが日本について語るにせよ、淡々とした態度であった。中国の経済規模は当時、日本の4分の1ほどだった。
中日は1972年に正式に国交を結んだが、経済交流を回復したのは1978年以降だ。当時企業の役員になっていた人の多くは、戦前に中国と切っても切れない関係を持っていた。彼らの言葉を引用するならば、彼らは「肌の感覚」を持っていた。彼らは中国の温度変化を自ずと察し、今後の方針を定めることができた。
しかし今年10月の北京―東京フォーラムにおいて、出席した日本の経営者は70歳を過ぎていたが、中国での戦争に参加しておらず、中国での生活の経験を持たない。彼らは中国のことについて聞かれると、見当もつかない様子だった。
このような反応は、さまざまな面で示されている。
経済が高度成長期に入り、一般人の消費が発展し、スーパーやショッピングモールが建設される。日本はこれに20−30年の時間を費やした。しかし中国に進出し、スーパーが建てられるのを待っていた日系企業は、日本小売業界が不慣れとするネット通販時代に入ったことに気づいた。さまざまな小売業態の共存が、現在の中国市場の特徴となっている。日系企業はこの多層的な競争の中で、最大の競争相手を特定できるとは限らない。「見当もつかない」は、中国を見る日系企業の特徴となった。
高速→中速→安定化は、経済発展の一つの法則だ。日本は高度発展期の後に「失われた20年」を経た。中国は30数年間に渡る発展の後、中速の発展期に入った。中国経済には今後、どのような特徴が見られるだろうか。日本鋼管と川崎製鉄の統合により生まれたJFEホールディングスの數土文夫相談役は、「この問題について、非常に関心を持っている」と語った。日本経済界の重要なシンクタンクである大和総研の武藤敏郎理事長は、「中国の都市化の問題に関心を持っている」と語った。これは都市化に伴い環境問題が発生するためで、欧州・米国・日本にも前例がある。さらなる都市化は、環境の負荷がより深刻になることを意味する。中国はいかにこの問題を解決するべきだろうか。
中国の小売業の市場変化、中国の経済中速発展、都市化の過程に対する観察を含め、日本の経営者は自身の経験に基づき中国の問題に注目し、非常に具体的な観点を持っている。日本の古い世代の経営者が、最終的に期待感を持ち中国事業を判断したのとは異なり、現在の経営者はデータと経済理論に基づき分析を進める傾向がある。しかし彼らには「肌の感覚」がないため、結論を導き出しがたい。(著者:中国の日本問題専門家の陳言氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年11月24日