ヒューマニズムを描く
中国のファンは、渡辺さんのサイン会に一定の「型」があることを記憶している。まずは携帯している特性の毛筆で恭しくサインをし、次に隣の助手に扉のページにしっかりと判を押させ、それから読者にお辞儀をするのだ。
曹氏は、「渡辺さんのこのような振る舞いを見ると、文芸創作に対して真剣かつ謙虚な態度を持っており、エロスのためにエロスを描いているわけではないことが分かる。渡辺さんには豊富な医学教育の背景があり、その創作の本意は極端な状況におけるヒューマニズムの描写にあり、俗っぽくなく、グロテスクでもない」と分析した。
中国文化、中国のグルメを愛する
渡辺さんは中国のファンに「老渡」と呼ばれ親しまれている。「老渡」は逝ってしまったが、中国文化に関する美談を残した。
囲碁を打ち、毛筆で字を書き、上海蟹を食べ、紹興酒を嗜む。これは晩年の渡辺さんが、訪中した時に好んでしたことだ。中国の出版界の人々にとって、「老渡」は普段は慎み深いが、中国のグルメとなると、子供のような笑みを自然と漏らす人だった。
曹氏は、「渡辺さんはわざわざ上海のリニアモーターカーに乗りに行き、最高速度に達すると、私に記念写真を撮るよう頼んだ。渡辺さんは中国に関するものを含む、多くの新しいものを喜んで受け入れていた」と話した。
報道によると、晩年の渡辺さんは日中両国の文化を通じて友好交流を支持していた。一部の文芸評論家は、「渡辺さんはその他の日本人作家と共に、中国人が現代日本の文芸に接するための窓口を開いてくれた」と指摘した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年5月6日