林国本
中国スポーツ界のこのところの動きを見ていると、いよいよロンドン・オリンピックを視野にとらえることになったように見える。
今回の広州アジア大会でもかなりの種目において若手メンバーを多数起用し、若手に経験を積ませる動きが見られた。スポーツ競技の「宿命」で、ずっとベテランばかりでプレイし続けることは不可能であることは自明の理。日本のスポーツ界に目を向けても、世界選手権大会のために力を温存したケースが見られる。競技スポーツであるかぎり、こうした駆け引きは不可欠である。
新中国建国以来、国民の健康水準の向上に力を入れ、大衆スポーツの展開に努めてきたが、それは大きな成果を上げたと言えよう。オリンピックやアジア大会での成果がそれを示している。
ごく少数の人たちは、メダルの取得に汲々とすることはどうかと言っているが、私見としては競技スポーツであるかぎり、正々堂々とベストを尽くしてプレイするべきだと考えている。これは古代のオリンピックでもそうであったはずだ。
中国のスポーツがこれだけ強くなったことは喜ぶべきことであり、テレビを見ていても気持ちがすっきりすることも確かだ。しかし、トップに立つことは、追われる立場に立ったことを意味する。世界の強豪がひしめくなかで、この地位を保ちつづけることは並大抵ではない。特に最近は、他国に移住して、その国の選手またはコーチとして、自分とかつて同じ釜の飯を食べた人たちと対戦しているケースも見かけるようになった。さらには、ルールの変更という事態も目にするようになった。強くなったための「負担」が増えていくなかで、いかにして平常心を保ってプレイしつづけるか。これは中国スポーツ界にとっての新たな課題であろう。