長年に渡り継続されてきた環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が、ついに「終了」の段階に入った。交渉国の米国や日本など12カ国の代表者がハワイに集結し、TPPの新たな交渉に関する事項の調整を行った。
米日が2012年2月にTPP交渉を開始してから、両国の多くの産業における「利益の衝突」が交渉の焦点となり、交渉の進展を遅れさせた。今回の全体交渉前、米日の代表者は事前に会談し、食い違いの早期解消に積極的な態度を示した。しかし実情は楽観視できない。
農産物について、日本は豚肉、牛肉、コメの輸入を制限しようとしている。自動車について、米国は自国の市場を守ろうとしている。金融業について、米国は為替操作に関する条項をTPPに盛り込もうとしているが、日本などの国から明確に反対されている。
産業の中身を見ると、米日両国の「利益のもつれ」は3年前と比べそれほど大きく変わっていない。しかし双方の駆け引きの焦点は、もはや単純な技術レベルのデータや条項ではなく、心理的優位を勝ち取るという新たな目標が含まれるようになった。つまり米日はTPP交渉を通じて、将来の二国間関係でより能動的になり、心理的に優位に立とうとしている。
米国が当初、日本によるTPP交渉の参加を歓迎したのは、日本がアジア太平洋リバランス戦略の重要な「駒」になり、アジア太平洋の政治生態チェーンおよび産業バリューチェーンの新構造を構築する力になることを願ったからだ。東日本大震災と景気低迷に見舞われた日本にとって、TPPの巨大な潜在力は魅力的だ。日本は積極的な姿勢により、米国との交渉で多くの「政治的な見返り」を手にすることができる。こうして両者はたちまち同調した。
しかし周知の理由により、アジア太平洋の政治・経済構造はこの3年間で劇的に変化した。米国のこの地域における、かつて誇りにしていた影響力も、内外の要素により弱められた。任期を終えようとしているオバマ大統領が、この現状に満足するはずがない。
オバマ大統領は2015年の国家安全保障戦略報告書の中で、米国にとってのアジア太平洋の重要性を再確認し、TPP交渉の早期終了を願った。しかし日本の現在の心境は、当初と異なっている。アベノミクスの刺激により、日本経済には回復の兆しが見えており、自信を持って米国との対話に臨んでいる。政権運営の基盤を固めた安倍政権は、米国の前で「値上げ交渉」を始め、「正常な国になる」という野心を米国のアジア太平洋戦略に結びつけようとしている。これはより重要な事だ。
一方は野心を表し始め、一方は優位を維持しようとしている。この食い違いにより、米日双方は一歩も譲れぬ状況となっている。当然ながらTPP交渉は最終的に終了するが、人々はその過程の変化から、米日関係に微妙な変化が生じていることを感じ取るだろう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年3月18日