中国が設立を提案したアジアインフラ投資銀行(AIIB)はそんな状況下で新星のように現れた。インフラ建設が経済を牽引する作用を持つことは世界の共通認識である。多くの国はAIIBを通じてその利益を共有し、経済を復興させようと考えた。米国の圧力の下で形成されたAIIBへの隔離壁はゆっくりと崩壊し、米国自らも協力を模索するシグナルを出し始めている。米国に追随してきた日本は難しい立場に立たされている。
安倍首相は今月、米国を訪問する。その中では、TPP交渉やAIIB、中日関係が重要なテーマとなると見られる。AIIB問題で苦境に立たされた日本は、TPPの問題で米国との妥協を探ることになる可能性もあるし、TPP交渉国の関係を協調させる動きに出る可能性もある。米国はAIIBの運営体制の問題について協力に向けたシグナルを送っているものの、長期にわたって世界的な金融機関を掌握していた米国と日本が、中国とそのパートナーによる新たな機構の設立を黙って受け入れるとは考えにくい。日米両国は、AIIBと一種の競争的な協力関係を連携して築いていく可能性もある。