安倍晋三首相は先ほど、アジア各地でイノベーションを開花させるため、今後5年内に政府とアジア開発銀行(ADB)などを通じて、アジアのインフラ整備に総額1100億ドル前後の投資を行うと発表した。この投資額は、日本の過去5年間のアジアのインフラ整備に対する投資額を3割ほど上回る。これほど大規模な投資は、戦後日本の海外投資の歴史において初だ。またADBが投資額を増やすのも、2008年の金融危機以降で初のことだ。
創設の準備を進めているアジアインフラ投資銀行(AIIB)と比べ、日本のこの動きは、投資先と規模、もしくは時期の選択で一種の焦りを露呈している。日本のこの焦りは、国内外の両面から理解することができる。
日本国内を見ると、慌ただしくアジアインフラ投資計画を発表した経済的・戦略的な目的は、日本経済の復興だ。日本経済は長年低迷しており、特に金融危機以降は振るわない。景気回復を刺激するため、日本はいわゆる「アベノミクス」を推進した。しかし「3本の矢」をすべて放った現在も、日本経済は回復の兆しが乏しい。日本政府が発表したデータによると、2014年の実質GDPは前年比で−1%、個人消費は−3.1%、企業の設備投資は−0.5%となった。この状況下、安倍首相は国内経済復興のため、アジアの市場から「4本の矢」、つまりインフラ投資を求めざるを得なかった。こうして輸出と投資を促進し、国内経済の回復を刺激するのだ。
日本の対外戦略を見ると、アジアインフラ投資計画の目標は、アジア市場の争奪だ。ADBのアジアへの融資能力は現在、わずか130億ドルほどだ。ADBの報告書によると、2010−2020年のアジアのインフラ整備は計8兆2800億ドルの投資を必要としている(国別で約8兆ドル、地域で2800億ドル)。第二次大戦後、日本はアジアの復興をけん引し、アジア経済の離陸を促した。しかし今や中国の経済が高度発展し、アジア経済のメインエンジンになった。この状況下、日本はインフラ投資という切り札により、アジア市場を取り戻そうとしている。
当然ながら、日本政府は金が余っているわけではない。日本の外貨準備高は1兆2500億ドルで、米国債を少しでも手放せば、アジアのインフラ整備に投資できる。しかしアジアのインフラを活用したければ、意地になり対立するわけにはいかない。地域内の協力によって初めてアジア経済というパイを大きくし、日本の経済成長をけん引することができるのだ。(筆者:陳鳳英 中国現代国際関係研究院世界経済研究所所長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年6月11日