解決しがたい「地方消滅」危機
寄付金は財政難を救えるかもしれないが、人口流出の問題を解決することはできない。1960年代以来、日本の農村と地方の若者は大量に、東京や大阪、名古屋などの大都市へと仕事を探しに出かけていった。元総務大臣の増田寛也氏が率いる民間団体「日本創成会議」が2014年に発表した報告書によると、日本の半数近くの地方は2040年までに、若い女性(20-39歳)の人口が半減し、「地方消滅」の危機に直面することとなる。
上士幌町も危機に直面している地方の一つだ。日本国立社会保障・人口問題研究所の推算によると、上士幌町の人口は2040年までに現在の約5000人から3222人に減る見込みだ。
人口が東京に過度に集中している状況を改善するため、日本政府は昨年末、地方創生のための総合戦略を制定し、今後5年で地方に若者向けの雇用を30万口創出する計画を打ち出した。明治大学農学部の小田切徳美教授によると、地方や農村への移住を妨げる原因には、仕事の選択の余地が小さいことや地域が閉鎖的であることなどもあるが、最大の問題は、子どもが将来的に都市の大学に進学するための費用をいかに負担するかということにある。この問題の解決には、政府が一定の政策支援を与える必要がある。
明治大学と毎日新聞による共同調査によると、農村への移住者は2013年、全国で8181人に達したが、これは2009年から2012年までの居住者の総数の2.9倍に達する。これは控え目に見積もった数字で、実際の人数はこれよりも多いと考えられる。
調査によると、若者が農村への移住を希望するのは、都市で仕事が見つからないのが原因ではない。その目的としては、地方振興に貢献したい、田園生活が好きである、自らの能力を発揮したいなど様々なものが挙げられる。若者は現在、「半農半X」という新たな生活方式を形成しつつある。農業生産をしながら、半分の時間をほかの仕事や趣味のために使おうという暮らし方である。