子細に検討して練り上げた「安倍談話」の行間から、安倍首相が歴史の重荷を急いで下ろそうとしている態度がうかがえる。安倍首相は歴史問題の重要性をよく知っており、かねてより戦後の国際秩序と日本の平和憲法による日本の安全保障政策への束縛に不満を抱き、日本を「普通の国」に変えようと志していた。
安倍首相は(談話の中で)歴史問題をはっきりとは語らなかった。その背後にある論理はこうだ。日本が侵略と植民地の歴史を漂白し、歴史の重荷を下ろせば、日本の国民とその子孫は誇りをもつことができ、正々堂々と政治大国、軍事大国の道を歩むことができ、日本は強い国に戻り、最終的に「普通の国」になることができる、ということだ。
安倍首相がこのように考えるのは、とどのつまり、現実と歴史を切り離そうと考えるからだ。
安倍首相はこのほどメディアに対し、「歴史は歴史家に任せる」といういつもの調子を繰り返した。
問題は、事実が再三証明するように、日本の歴史問題における誤った言動が、いつもこの地域にトラブルをもたらしているということ、歴史問題に対して深い反省と心からの後悔をすることのできない日本が、この地域や世界に対する潜在的な憂慮の種になっていることだ。「前事を忘れざるは後事の師なり」という言葉がある。歴史への深い認識を欠けば、現実と未来は砂上の楼閣になり、根っこのない木になる。歴史をあいまいにすれば、現実を混乱させ、未来の目をふさぐことになる。
歴史問題は中日関係の政治的基礎と中国国民の感情に関わる問題だ。中国が歴史問題で日本に対する圧力を保持するのは、歴史問題を決して手放さず、日本と軋轢を起こそうと考えているからではない。