中川幸司:中国の環境政策のトップダウン型からボトムアップ型への転換に期待

中川幸司:中国の環境政策のトップダウン型からボトムアップ型への転換に期待。 中国の政策目標達成は往々にして極めて強力な行政主導で実施されるが、気候変動対策においても例外ではない。中国が得意なトップダウンの行政指令型メカニズムによる政策実施は、中期的な国家目標を明確に示し遂行することができるため、産業・社会の進むべき道筋を短期的に強く方向づけることが出来ることが魅力である…

タグ: 環境政策 産業戦略 メリット

発信時間: 2015-09-02 15:56:10 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

文=コラムニスト・戦略研究者の中川幸司

気候変動・環境保護・省エネ社会へむけた世界的な取り組みは、商・工業といった産業分野、そして家庭や市民生活の細部まで多岐にわたっている。

20世紀後半、先んじて工業化を果たした先進国各国が国内末端問題としての所謂「公害」対策にのりだすまでに時間がかかったが、自然環境変化への対応とその保護への努力は、いまでは一国一地域の問題というよりも地球規模の国際的な対策として人類文明が取り組むべきテーマとなった。 しかしながら、発展途上国から先進国までが参画した1997年COP3(第三回気候変動枠組条約締約国会議)において温暖化防止の具体的数値目標を定めたものの、主要国の離脱・目標断念、そして新興国の中国・インドが対象外であったため、「京都議定書」は形骸化してしまった。「京都議定書」に変わる新しい国際的な枠組みは、今2015年となってもまだ登場していない(新たにポスト京都議定書を策定しようとする動きはあるが。) 

産業面の環境・気候変動への取り組みについてG20各国での外交利害も絡む中、景気減速が警戒されるもののGDP世界第二位として世界経済の大きな一角を占める中国は、その動静が注目される重要プレーヤーである。 2014年には「国家気候変動対応計画」が中国国家発展改革委員会(発改委)から公表され、中国が中期的な国策として環境問題に取り組んでいく姿勢がみえる。この計画には2020年までの数値目標が記されているだけでなく、目標達成のために行政部門の達成評価制度即ち公共セクターのガバナンスにまで踏み込んだ内容となっている。

中国の政策目標達成は往々にして極めて強力な行政主導で実施されるが、気候変動対策においても例外ではない。中国が得意なトップダウンの行政指令型メカニズムによる政策実施は、中期的な国家目標を明確に示し遂行することができるため、産業・社会の進むべき道筋を短期的に強く方向づけることが出来ることが魅力である。しかし、強力な行政部門が社会を牽引する中国とはいえ、未来永劫政府部門の助力を必要とする仕組みは脆弱であるから、民間の自発的な社会システムへと移行させる制度設計をしなければならない。数十年に渡る長期的な視点に立った場合、持続的で自発的なボトムアップ型の政策目標達成メカニズムに転換することが必要となる。

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