全人代外事委員会主任委員、中国国際経済交流センター客員副理事長の傅瑩氏は10月24日に第11回北京−東京フォーラムに出席し、昼食会で「東アジアの地域協力の視野における中日関係」と題した演説を行った。要約は下記の通り。
中日関係、中国周辺、さらには世界の状況に新たな変化が生じており、より開放的な視野により中日関係を観察する時が来た。中日関係が今日のような複雑な境地に陥っているのは、歴史と現実のさまざまな要素がもつれ合った結果だ。中日には真の意義での理解が欠けており、日本側は中国人の関心事に耳を傾けようとしていない。
釣魚島問題を例とすると、日本側は現在も自説を貫き、中国政府と民間が示した強い意見を完全に聞き入れていない。中国人は釣魚島を失うことを受け入れない。係争の棚上げは放棄を意味するものではない。これは日本側がなおざりにしている重要な点だ。日本の現政権は島を巡る領土問題を国家安全のレベルに拡大し、さらには日本の生存に関わる戦略・安全の危機と誇張し、日本全体を脅かす隣国として中国を描写している。これにより日本の一般人の中国に対する誤解が深まっている。
中日が互いに相手に耳を傾けられるかが重要であり、ただひたすら自分の立場から問題を考えてはならない。また双方は中日関係の改善と発展に関する、地域の視野を取り戻さなければならない。1990年代より、東アジアの地域経済が力強く発展し、各国の人々に大きなメリットをもたらした。東アジアは制度と価値の隔たりを乗り越える道を歩んでいる。これが人類社会に与える啓発的意義は、欧州に劣らない。世界経済の規模は、1985年から2014年の間に6.2倍になったが、東アジア経済体(ASEAN+中日韓)の経済規模は9.3倍になった。東アジア経済体が30年前に世界経済に占めていた比率は17%未満だったが、現在は25%に達した。
アジアの地域協力が今日の非凡な成果を手にするため、中国と日本は多大な貢献を成し遂げた。しかし近年、東アジアの協力はそれほど注目されなくなった。東アジアの会議は、往々にして消極的な内容に注目を奪われている。これには多くの原因があるが、主に地域内の係争・問題が障害となっている。米国のアジア太平洋リバランスは安全の議題を強調し、複雑な要素を加えている。世界金融危機も、地域の発展に影響を及ぼした。中日という東アジアの協力の重要な推進者の関係が緊張化し、東アジアの協力に消極的な影響をもたらしている。
南中国海問題について、中国と日本はいずれも貿易大国であるため、西太平洋の航路の自由と安全に高度に依存し、注目している。これは中日の食い違いではなく、共通認識であるべきだ。しかし日本は南中国海の問題で過度に肩入れし、日本の意図に対する中国人の警戒を強めている。
東アジアの地域協力の「後退的」な変化は、地域の競争力を損ねる。中日はそこから利益を得ることができない。我々は自分の責任を見つめ直し、共に東アジアの協力に勢いをつける必要がある。これは最終的に、各自の利益に合致する。
中国が提唱する「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)、アジアインフラ投資銀行などの新たな取り組みの推進は、東アジアの協力により幅広い舞台を与える。地域の取り組みに積極的な内容を持たせ、消極的な係争・問題に足を引っ張られるのではなく、再び協力事業を中心に据えるべきだ。中日関係と東アジアの協力が一日も早く、心を開き対話をする、寛容かつウィンウィンの協力の軌道に戻ることを願う。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年10月26日