しかし東芝には、腕を切り落とす勇士のような決意がなかった。東芝はテレビ、洗濯機、パソコンという伝統ある家電事業が捨てがたかった。事業分離の提案がなされても、いつまでも実行に移されなかった。こうして日本経済新聞が業界筋の話として、「東芝は20世紀型の事業構造から脱却するチャンスを失った」と報じるに至った。
東芝の遅れは、内部の「騙し合い」とも関連している。昨年7月、東芝は日本全国を揺るがす粉飾決算が暴露された。東芝は利益を水増しして表面的な業績を維持し、しかもこの粉飾を長年続けていた。表面的な数字が輝かしければ、社内ではモデルチェンジの緊迫感が生まれない。粉飾決算は、東芝の信用を大きく損ねた。証券取引等監視委員会は、東芝に73億7350万円の課徴金納付命令を出すよう勧告すると表明した。
東芝は現在、家電を生産するほど赤字が膨らむという状況になっている。赤字が5000億円を突破すると、東芝という超巨大企業でも耐え切れなくなった。東芝は資産売却を余儀なくされた。東芝はインドネシアに持つテレビ・洗濯機の生産企業を、中国家電大手のスカイワースに売却した。さらに東芝のパソコン事業は富士通と合併し、白物家電はシャープに投げ売りすることになりそうだ。東芝の今後の中心事業は、半導体と原発になる。
しかしながら、東芝の先行きは楽観視できない。予測によると、東芝の2016年度の含み損は1兆円弱に達する。東芝は資金調達を必要としているが、低迷する業績により投資家は二の足を踏んでいる。ムーディーズは東芝の社債の格付けを「ジャンク債」に引き下げた。東京証券取引所は9月まで、東芝株を特設注意市場銘柄に指定するとした。
東芝の教訓は痛ましい。決断すべき時に決断せず、混乱を招いた。モデルチェンジの緊迫感がなければ、往々にして競争で淘汰される。この「東芝病」は、多くの国の企業にも存在している。
米国では、同じく総合企業のゼネラル・エレクトリックが、巨額の赤字を計上している。金融部門の巨額の赤字により、同社は2008年の国際金融危機の深淵に陥った。しかし同社はこの苦しみを反省し、大胆に金融部門を分離し、ハイテク製造業の強化に専念した。同社は今も米国の超巨大企業である。
中国は現在「供給側の改革」を行っているが、これは同じような「東芝病」にかかったことが重要な原因だ。生産される製品はすでに市場の需要に合致しておらず、にも関わらず原材料やエネルギーを消費している。その結果、必然的に生産能力が余り、赤字が拡大している。改革は大胆にこの赤字事業を分離し、モデルチェンジにより新たな事業を切り開かなければならない。右顧左眄し躊躇していれば、市場に淘汰される可能性が高い。
東芝は生産能力を縮小し、家電事業を中国企業に安売りしたが、これは腕を切り落とし生き延びるためだ。中国企業にとってはチャンスだが、同時に試練でもある。今は東芝の工場を買収し大喜びしていても、明日はこれが大きな重荷であることに気づくかもしれない。東芝の白物家電を引き継ぐシャープも、実際には苦しみもがいており、投げ売りも避けられない。
中国の2014年のテレビ販売台数と売上は、30年ぶりに同時に減少した。これは一種の警鐘だ。より警戒すべきことは、中国ブランドが東芝ほど輝かしくなく、事業も東芝ほど多元化されていないことだ。スリム化した東芝にはまだ半導体や原発という命綱があるが、人前に出して恥ずかしくない事業を持つ中国企業は、どれほどあるだろうか?
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年1月15日