日本企業は1990年代に中国市場で真っ盛りにあったが、今やその姿は見る影もない。ソニーは長年に渡り赤字を計上し、パナソニックは中国で最後のテレビ工場を閉鎖し、シチズン広州は突如解散となった。「日本企業が中国から大挙撤退」「失われた20年の泥沼にはまる日本」といった、日本企業の衰退を唱える記事が各紙に掲載されている。だが、本当にその通りなのだろうか?日本企業の中国市場撤退の現状はどうなっているのだろうか?日本企業はいかにしてモデルチェンジを実現するのだろうか?中日には他にも協力できる分野があるのだろうか?環球時報の記者はインタビューにより、その真相に迫った。
中国撤退の比率は低いが、上昇傾向に
日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年1月、「2015年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」に基づく、「『新常態』に向けた構造調整における日本企業の中国事業」と題する最新の研究報告書を発表した。中国における日本企業の「今後1−2年間の事業発展方向」に関する設問について、「拡大」と回答した企業は38.1%で初めて4割以下となった。「現状維持」は51.3%で、2014年の調査結果より5.3ポイント上昇した。「縮小」(8.8%)、「第三国(地域)に移転もしくは撤退」(1.7%)は10.5%で、2014年より3ポイント上昇した。日本企業の中国からの大挙撤退という説が、事実でないことが分かる。
事業を「縮小」もしくは「移転もしくは撤退」とした理由のうち、「売上が減少」は6ポイント上昇の67.1%となった。これに「調達コスト、人件費などのコスト増」(63.6%)、「発展の潜在力の低下(36.4%)」が続いた。また「高付加価値商品の受け入れ度が低い」、「生産・販売網の調整」、「人材確保が困難」、「管理・規制が厳格化」なども、日本企業の中国事業に影響を及ぼしている。ある日系アパレル企業の従業員は、環球時報の記者に対して、「中国から撤退した過半数の日本企業は、本社そのものの経営が不調で、中国とは関係がない」と話した。しかしこれとは異なる観点もある。ジェトロ北京事務所長の田端祥久氏は、「現在の調査結果によると、この原因により中国から撤退した日本企業は1社のみで、過半数には程遠い」と述べた。
それでは中国から撤退した日本企業は、今後どこで事業を展開するつもりなのだろうか?ジェトロの最新の調査データによると、パキスタンと回答した日本企業は76.7%で最高だった。ミャンマーは75.8%、インドは74.7%。近年のデータを調べると、日本企業はミャンマー、インド、スリランカなどでの投資拡大に強い意欲を持っている。清華大学野村総研中国研究センター理事・副センター長の松野豊氏は、日本企業がこれらの国に進出する理由として、▽人件費や材料費などのコストが中国より低い▽政治的リスクが少ない――という2つの理由を挙げた。ある部品加工メーカーは、「多くの日本企業は中国から撤退したいわけではない。長年をかけ、中国の労働市場は充実かつ成熟し、労働生産性が高まった。他国に移転するということは、一から労働者を教育し、市場を育成することになる。そのためには大きな手間と費用がかかる」と語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年2月14日