シャープは技術面で元の殻に閉じこもり転向が難しい一方で、経営面でも保守的になりすぎ、自国以外の投資の受け入れに躊躇している。
鴻海精密工業の郭台銘会長は2012年、シャープに株式9.9%の買収の話を持ちかけ、7000億円の再建計画を提案した。ところが、経済産業省管轄下の官民ファンド「産業革新機構」が突然介入し、合理的な再建計画を提出できないまま、日本ブランドが買収されることを阻止しようとした。シャープは鴻海との提携を数年遅らせたあげく、外部投資者を受け入れ、業務再建のタイミングを逃してしまった。
百年の老舗が買収されるという方法で再生を図る羽目になったのは、閉鎖的で硬直化した企業文化があるためである。現在の革新は、製品自体の琢磨より新天地の開拓の方が重要であり、国際資本との提携というケースが多い。こうした流れにうまくついていけなかったことがシャープの失敗の原因である。
シャープに比べると、パナソニックが経営方針の転換で見せる意志ははるかに強い。1918年に創業したパナソニックも近年、最も深刻な経営危機に陥っており、2012年と2013年に2年連続で7000億円の赤字を出した。家電分野での黒字転換は望めないと判断したパナソニックは、速やかに戦略的な方針転換に踏み出し、発展の重点をB2CからB2Bに切り替えた。
2016年初め、パナソニックはテレビ・ビデオ・電話部門の技術者400人を傘下の「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社」に異動させた。16億ドルを投下して米国にステラ向けの電池工場を設立したり、500億元を投下して山東省に中国仕様の自動車電池工場を設立したり、5000万ドルで横浜に無人運転の実験基地を建設するなどし、パナソニックの自動車産業における布石が徐々にはっきりしてきた。
自動車のほか、パナソニックはLED、スマートホーム・スマート団地などのソリューション、老後ケア、医療などの分野でも意欲を見せている。重点産業に力を注ぎ、産業チェーンを延長することにより、パナソニックはシャープよりスムーズに経営転向を実現した。2014年には1200億円の黒字を計上し、2015年も利益増を見込んでいる。