「ソチの美しい光景を思い出しながら、昨年11月以来、ウラジミールと会う機会を待ちきれない思いで待っていた。私は今日、あなたに会えて本当に嬉しい」日本の安倍晋三首相は6日、ロシアのプーチン大統領と南部ソチで会談を開いた。個人的に良好な関係を構築した自信からか、安倍首相はプーチン大統領を呼び捨てにし、親しい間柄で用いる二人称で呼びかけた。プーチン大統領が安倍首相に「あなた」という尊称を用い、礼儀正しく「尊敬する首相」と呼びかけたにも関わらずだ。
安倍首相は首相再任以来、プーチン大統領と13回目の会談となった。戦後70数年の日ロ関係の縦軸、あるいはウクライナ危機を背景とする西側とロシアの立場という横軸においても、安倍首相の対ロ関係への熱意あふれる姿勢は非常に目立っている。
安倍首相の「熱意」に対しては、さまざまな解釈がなされている。例えば、安倍首相は日ロ領土問題を解決し、歴史に名を残そうとしている。今夏の参院選前に外交の成果をアピールする。さらにはロシアの力を借り中国をけん制しようとしている、などだ。
さまざまな考えがあるが、現実は至って厳しい。安倍首相がどれほどロシアの機嫌を取ろうと、米国の束縛から逃れることはできない。
安倍首相の訪ロが噂され始めた今年2月より、米国が影響力を発揮した。日本メディアの各種スクープはさておき、ロシア外交部の報道官も、米国は強硬に安倍首相に訪問しないよう求めていたと述べた。「米政府筋」はその後、「ロシアと一度連絡を取るだけならば、大したことはない」と表明し、安倍首相の訪ロが実現された。
このように見ると、行くにせよ行かないにせよ、安倍首相はやはり米国の許可が必要だ。日ロ関係の2大問題(領土問題の解決と経済協力の実施)に関する安倍首相の行動も、常に米国人からの指図を受けることだろう。
安倍首相はプーチン大統領との会談後、日本メディアに対して、「かつてない新アプローチ」でロシアと領土問題の交渉を行うと述べた。しかしこの「新アプローチ」とは何かについて、安倍首相は説明しなかった。ロシアの歴史学者は、「安倍首相は対外政策の自主性を極力示そうとしているが、米国が領土問題における立場の根本的な変化を認めるとは限らない」と判断している。米ナショナル・インタレスト誌が「米国は日本の主なボディーガード」としているように、日ロ関係の強化により、米国は東アジアにおける影響力の低下を懸念することになるだろう。
安倍首相は米国が、日ロ領土問題の解決を決して望まないことを知らないわけではない。日本と旧ソ連の戦後の和解は、日本を冷戦の前線基地にしようとしていた米国を不快にさせた。米国は沖縄返還を拒否することで、日本を脅迫した。日本は最終的に、旧ソ連との平和条約締結を諦めた。
日ロ経済協力は近年、鳴かず飛ばずの状態が続いているが、これには米国という無視できない要素がある。ロシアはロ日経済協力への大きな期待を示し続けており、安倍首相もこれに応じ迎合していた。例えば今回の首脳会談で、双方は大型投資プロジェクトの共同開発を決定した。しかし発言は発言で、行動とは別の話だ。
こうしてみると、安倍首相は日ロ関係の発展に積極的に見えるが、あまねく存在する米国の制限から逃れることは難しそうだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年5月10日