ロシアの放射線防護科学委員会メンバーのヴァレリー・ステパネンコ氏はこのほど、新華社記者の単独取材を受け、チェルノブイリのような原発事故の悲劇が25年後に日本で再演されたことは人々に衝撃を与えたとし、情報公開から庶民の健康問題への対応までの日本政府の取り組みは満足できる水準には程遠いものだと指摘した。ステパネンコ氏によると、福島原発事故は4つの教訓を与えるものとなった。
「第一に、政府は、事態の進展について迅速かつ全面的に人々に知らせなければならない。この点で日本は旧ソ連の二の舞を演じた」。ステパネンコ氏によると、この両方の災難では発生当初いずれも、当局による機密措置が取られた。情報の封鎖と遅れから、日本政府は、放射性汚染の深刻な事故現場から人々を即時に避難させることに失敗した。
またこの両方の災難ではいずれも、情報公開の不完全と前後の矛盾という現象が出現している。例えば福島原発事故後、妊婦と児童に対する放射性ヨウ素汚染水の摂取の影響を測定する際、日本当局が発表した情報は非常に混乱したものだった。日本婦産科学会と日本医学放射線学会が発表したデータは互いに矛盾するものだった。
「第二に、放射線量を迅速に測定する必要がある。放射線で汚染された水を人々が摂取した場合は特に、甲状腺とその他の器官に対する放射性ヨウ素の影響を検査する必要がある」。ステパネンコ氏によると、事故初期に日本政府が行った健康検査は不十分なものだった。日本はその後、放射線の影響を受けた児童と青少年に対して比較的詳しいスクリーニングを行っているが、体内の放射性物質の線量の確定はまだなされていない。
日本の広島大学で教授を務めたこともあるステパネンコ氏は、住民の線量の遡及的分析をなぜしないのかと日本人の同僚に何度か迫ったが、専門家や学者らは黙ってしまうか、あまり詳しく語ろうとしなかった。現在に至るまで、原発事故地域の児童が当時摂取した放射線量は明らかになっていない。こうしたデータは後続の治療において極めて高い重要性を持つ。
第三に、原子力発電所は地質活動の活発な地区に建てるべきではなく、地震帯に建設された原子力発電所は閉鎖する必要がある。日本の原子力発電所はいずれも海岸地帯に建てられており、こうした地帯は常に、地震や津波の可能性にさらされている。
ステパネンコ氏は、「津波を防ぐために壁を作ることはできる。福島原発にも高さ6メートルの壁が作られていた。だが結局、高さ13メートルの波によって突破されてしまった」と指摘する。
ステパネンコ氏によると、日本政府は現在、原子力発電所の再稼働に向けた「ポスト・フクシマ」の基準を設けている。だが日本は地質活動の活発な場所にあり、現在の技術レベルの下で原子力発電所を建設するにはまったく適していない。
第四に、原発事故の影響は国内にとどまるものではなく、事故の起こった国は国際社会にただちに情報を公開する必要がある。福島原発事故の後、放射性物質は風によって太平洋へと流され、米国の太平洋沿岸では放射線レベルの上昇が確認された。5年前のこの風が逆に吹いていれば、放射性汚染は韓国や中国、ロシアにも及んだと考えられる。
ステパネンコ氏によると、原発事故発生時の情報公開に関する国際的な基準はまだない。このような基準の制定が複雑なものであることは間違いないが、人類の生命の尊重という観点からも、関連する制度を検討・制定する必要がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月29日