昨年末やかましく騒がれた環太平洋経済連携協定(TPP)は、米国の大統領選の年に冷たく扱われているようだ。共和党のトランプ候補、民主党のヒラリー候補、サンダース候補はTPP不支持を表明している。トランプ氏は演説中、TPPを「破棄」すべきと直言した。
しかしTPPに不確定要素があるからといって、立ち消えてしまう可能性があると考えるべきではない。大統領選の最終的な結果がどうあれ、TPPは▽米国のアジア太平洋回帰という国家戦略は不変▽アジア太平洋回帰戦略におけるTPPの中心的な地位は不変▽TPPが中国を念頭に置くことは不変――という「3つの不変」を維持する。
しかしTPPの揺らぎは、中国にチャンスをもたらす。中国は昨年11月の東アジアサミット会期中、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳共同声明」の採択を促した。しかし12カ国がTPPに調印したことで、中国は不利できまりの悪い立場となった。一部の国はTPPに加わり、RCEPへの熱意を失っており、さらにはRCEPの必要性を疑問視している。半年が経過した現在、アジア情勢には逆転が生じつつある。米国の大統領候補のTPPに対する批判、さらには反対は、米国の新大統領が自国の国益のために、TPP協定を見直すことはないかという他国の疑いを深めている。
誰が最終的に当選しても、新大統領は就任初年度は内政に取り組み、2年目に外交に注意を向ける。これは中国のアジア協力の調整に絶好のチャンスをもたらす。中国は大統領選の当選者の就任前後の態度にどのような変化が生じるのかを見守る必要はなく、大統領選が米国の外交政策にもたらす変化を十分に念頭に置くべきだ。中国は現在、アジア事業における積極性と求心力を高めている。アジア諸国が中国と真剣に協力を検討する雰囲気が形成されている。一部の国の、TPPに加わったからRCEPはどうでもいいという態度が薄れている。中国は、米国のアジアにおける影響力が低下するチャンスをつかみ、RCEPおよびアジアのパートナーシップの形成を促すべきだ。2017年になれば、すでに計画を整えたアジアは、RCEPを重視するよう米国に圧力をかける。アジア太平洋の協力は将来的に、RCEPとTPPを基礎とし、この2つの枠組みの融合を推進することで、より大きな自由貿易区の形成を促す。これはつまり、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の形成だ。(筆者:陳鳳英 中国現代国際関係研究院世界経済研究所元所長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月29日