原子力研究開発機構は2011年4月、半減期が約30年間続くセシウムの拡散状況を、コンピュータでシミュレーションした。その結果、セシウムは潮の流れにより5年後に北米に到着し、10年後にアジア東部に回帰し、30年後に太平洋のほぼ全体に拡散することが分かり、長期的な影響が注目されている。福島大学環境放射能研究所の青山道夫教授も2015年に、1年内に約800兆ベクレルのセシウムが、北米西海岸に到達すると予想していた。セシウム137は福島原発事故で漏洩した最も主要な放射性物質だ。青山氏は、環境中の放射性物質の濃度を測定し、魚類の体内に蓄積される危険性を伝えることしかできないと述べた。
真相を直視しなければならない。米ウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー研究主幹は、「(日本政府と)人々のコミュニケーションがまったく取れていない」と指摘した。ベッセラー氏は2011年より、福島原発事故の海洋への影響を研究しており、同研究所内に海洋環境放射センターを設立した。ベッセラー氏は記者に対して、「福島原発事故の海洋への影響は空前絶後のものだ。漏洩した放射性物質の8割が海洋に入っているからだ」と述べた。
各国の専門家は、原発事故の環境・健康・食品安全など各分野への長期的な影響について、日本が意図的に言及を避けていると指摘した。独ハノーファー大学のゲオルグ・シュタインハウアー教授(放射線生態学)は記者に対して、「分析によると、事故後の一部汚染地域では肉類の管理が遅れており、放射性物質の濃度が基準超の牛肉が市場に流通している可能性がある」と話した。
さらに、政府が事故後の処理を盲目的に楽観視しており、事故の影響を取り除く取り組みが不足していると警鐘を鳴らす専門家もいる。日本の小児科医、チェルノブイリ子ども基金顧問の黒部信一氏は、チェルノブイリ事故の被害者の治療施設を訪問したことがある。黒部氏は、「チェルノブイリ事故と比べ、福島原発事故後に設立された治療施設は少なすぎる。政府の現在の処理方法によると、福島原発事故による健康被害は30年後、チェルノブイリ原発事故の被害を上回る可能性がある」と指摘した。
これほど重大かつ深い影響を及ぼす原発事故、影響を受ける国民と国際社会を前にして、日本は重要な問題を避けることは許されない。政治的もしくはその他のいかなる目的であっても、災いを無視することは災いそのものよりも恐ろしい。「福島の問いかけ」を受けた日本は、まだ世界に答えを出していない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年5月31日