4年に渡る交渉を経て、鴻海精密工業は約35億ドルで、シャープの株式の66%を取得した。郭台銘会長は以前、53億ドルという買収額を提示し、かつシャープのすべての債務を肩代わりすると表明していた。この土壇場の急展開における、郭会長の「値切り」のテクニックには舌を巻かざるを得ない。
日本メディアはこの紆余曲折について、シャープは郭会長が提示した巨額の買収額という美しい蜃気楼に惑わされ、すべての希望を鴻海にかけたと指摘している。鴻海はその後の交渉で、シャープの弱点を探し、最後にこれを突くことで買収額を大幅削減し、交渉をあっという間に終了した。
本当にシャープ買収に巨額を投じるつもりがあったのか、それともこれが値引きに向けた念入りの計画であったのかはさておき、郭会長はシャープ買収の決意を示していた。
鴻海は現在、主にiPhoneのボディや回路基板を受託製造しており、携帯電話内部のより重要な液晶パネルを製造したことはない。シャープはかつての輝きを失っているが、技術の蓄積と大量の特許技術により、「液晶パネルの父」としてディスプレイ分野(特にIGZO技術)で重要な地位を占めている。
アップルは2015年の新製品発表会で、iPad Proなどの新製品にIGZOを使用したディスプレイを全面的に採用済みとしていた。同技術により、アップル製品のディスプレイのエネルギー消費量を大幅削減できる。これによりバッテリーの持ちがよくなり、製品もより軽量で薄型になる。シャープはIGZOの量産化の経験が世界で最も豊富で、効率が最も高いメーカーとなっている。
iPadに必要なIGZOパネルのうち、シャープの供給量は9割に達すると推算されている。鴻海はシャープ買収で、200億元の受注を手にすることができる。またシャープの科学研究力を吸収することで、鴻海は有機エレクトロルミネッセンス(OLED)の開発の進展を促すことが可能だ。OLEDディスプレイには省エネ・軽量・薄型といったメリットがあり、その他のディスプレイにはない柔軟性を持つ。折り曲げられる携帯電話は、同技術を採用している。
アップルのティム・クックCEOが、iPhoneの液晶パネルを2018年まで、全面的にOLEDに交換すると表明したという情報もある。郭会長も、シャープの35億ドルの買収額のうち、OLEDパネルの研究開発と生産に2000億円を充てると話していた。
鴻海とシャープの合併は紆余曲折を経たが、そのウィンウィン関係は双方が最も適したパートナーであることを証明している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年6月29日