日本のM&Aコンサルティング企業であるRECOFの統計によると、外国資本による日本企業のM&Aは、今年上半期に1兆7300億円に達した。昨年同期の3.6倍と9年ぶりの高水準となった。そのうちアジアからの資本が78%を占め、昨年同期の10倍に上る。日本企業は現在、アジア資本の買収対象となっている。
産業のレベルアップを図るアジアの実力企業
今年6月、中国資本が日本で2つのビッグディールを成功させた。まずテンセント率いる投資ファンドが86億ドルを費やし、ソフトバンクに代わってフィンランドのスマホゲーム開発会社Supercellの筆頭株主となった。ゲーム産業への投資としては史上最大規模。次に美的集団が東芝の白物家電事業を500億円で買収した。
JETRO(日本貿易振興機構)が発表した「2015年対日投資レポート」が、この傾向を裏付ける。2015年、対日最大投資国は依然としてアメリカである。しかし投資ランキング上位10社を見ると、シンガポールや韓国、タイ、中国大陸、香港、台湾などアジアの国と地域が6社を占める。
日本に投資するアジア企業の特徴
日本に投資するアジア企業には2つの傾向がある。第1に日本企業が持つ技術とブランド力に注目し、グローバル製造業へレベルアップを図りたい企業である。
たとえば台湾の鴻海集団は3888億円を出資。シャープの株式の66%を取得した。美的集団もこのタイプに属する。日本のコンシューマー電子産業は近年、競争力を落としている。一方、アジアのOEM企業は数十年の経験を経て、生産基地の役割だけでは満足せず、産業チェーン上流へのぼりつめることを切望している。そんなとき、経営不振によりシャープや東芝が巨額損失を出したことで、鴻海や美的は実質的に救済者の役割を演じることになった。
日本に投資するアジア企業の2つ目の傾向は、観光など新興産業企業である。
日本は近年、ビザ条件の緩和などを通じて海外からの観光客を誘致している。2015年、訪日観光客数は2000万人、前年同期比で1.4倍になった。中国と東南アジアからの観光客は倍増した。LCCや免税店、ホテルなどの観光インフラ施設がアジア資本の間で人気となっている。春秋航空や吉祥航空など中国のLCCは中日間路線を増設し、人口減少で利用率が減少していた日本の地方空港に活力をもたらしている。
また、新興国の中産階級の生活レベルが向上するにつれ、アジア資本は日本の金融、不動産、食品輸出など高級サービス業への興味が高まっている。この2年の大型買収案からみると、銀行、商業系不動産、大手商社へ出資、または買収するアジア資本が増えている。
富士通総研の主任研究員である金堅敏氏は取材に対し、アジア資本が積極的に日本に投資する主因は円安にあると指摘する。量的金融緩和政策によってこの3年、円はドルなど主要通貨に対し3割安となった。日本の資産は相対的に安く感じられるようになった。
一方、アメリカや日本など先進国では、グローバル製造業がレベルアップを迫られている。東芝など日本の家電企業は、製造業の中で劣勢に立たされているが、中国にとって技術やブランド力は依然として高い付加価値を持つものである。両社がつながることで、日本家電産業にとっては不振部門の清算やモデルチェンジが図ることができるし、中国と東南アジアのOEM企業にとっては技術をレベルアップできる。