トランプ氏が当選して最も焦り、我を失っている同盟国は、日本だ。米国のアジア太平洋における最も重要なパートナーである日本の国内では、安倍首相本人も一般人も最終的に勝利するのがヒラリー・クリントンであると考えていた。安倍首相は今年9月、米NYで国連総会に出席した際にヒラリー氏と会談したが、トランプ氏とは会談していなかった。安倍内閣は大統領選の開票3日前、ヒラリー氏が当選すれば首相が早ければ来年2月に訪米するとメディアに伝えていた。しかし9日にトランプ優勢という情報が伝わると、外務省の職員は「当面の急務は、ゼロから関係の構築を開始することだ」と述べた。
トランプ氏の勝利が確定すると、安倍首相はまず河井克行首相補佐官に対して、「トランプ氏の関係者全員と会談したい、徹底する」と述べた。安倍首相とトランプ氏は10日午前、約20分の電話会談を開いた。双方は安倍首相がペルーAPECに向かう途中、17日にNYを経由しトランプ氏と会談することを決定した。河井氏は14日に先に訪米し、トランプ陣営と接触する。
安倍首相が米大統領選の結果を知りこれほど焦ったのは、次期米大統領のトランプ氏が日米同盟を見直すと表明していたからだ。日米同盟は、米国のアジア太平洋戦略の基盤、安倍首相が中国への強硬な外交を展開するための基礎とされていた。
日本を最も不安にさせているのは、トランプ氏の次の2つの主張だ。まず、日米安保条約の見直しだ。米国は日本の安全を保障するが、米国が攻撃された場合に日本は何もしないため、不公平だというのだ。次に、米軍が駐留する国に対して関連経費の全額負担を求め、これを拒否すれば自ら防衛しなければならないとした。
日本はこれについて、米国の海外軍事活動へのさらなる参加を日本に求めると同時に、在日米軍の負担拡大を求めると解釈した。経費がまだ解決できる問題だとしても、海外の軍事活動の負担は、日本国内でさらなる反戦・反米ムードを強めることになる。これは与党の政権運営に関わってくる問題だ。
安保の他に、トランプ氏のTPP(環太平洋経済連携協定)反対の主張も、安倍首相を懸念させている。安倍政権の貿易政策は、米国と共に交渉を進めるTPPを軸としており、近年になり米国とともにTPPを積極的に推進してきた。トランプ氏が共和党の大統領候補になると、TPPに加入している各国が審議を遅らせた。一方で安倍政権は10日、TPPを国会で承認させた。しかし米議会上院の共和党トップ、マコネル氏は9日「TPP法案を年内に国会に提出することはない」と表明した。日本人さえも、トランプ氏が就任後に考えを変えることに期待するしかないと、ため息をついているほどだ。
日米安保同盟とTPPは、安倍政権が軍事・経済面から「対中包囲網」を形成するための手段だ。ところがトランプ氏の意外な当選により、安倍首相の計算に乱れが生じた。調整できるか、どの程度調整できるかは、日本の未来の外交・安保・経済貿易戦略の動向に、すでに深い影響を及ぼしている。日本の中国、ロシア、朝鮮の核問題に関する政策の動向も、これにより影響を受けることになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年11月14日